【風、薫る】りんの看護の道を徹底考察|降格・山本さんの死・トラウマ・新潟行き——「看護婦辞めな」の先にある再起とは【F25/F29/F32ネタバレ】

朝ドラ「風、薫る」のヒロイン・一ノ瀬りん(見上愛)は、看護婦としてまっすぐに走り続けてきました。しかし第60話以降、「看護科の教師」への打診をきっかけに、その道は思いがけない挫折へと向かいます。取締への昇格と降格、担当患者・山本さんの死、そしてPTSD級のトラウマ——。この記事では、りんの看護の道をめぐる伏線[F25][F29][F32]を時系列で整理し、「りんは看護婦を続けられるのか」を考察します。各週の詳しいあらすじは伏線まとめハブから確認できます。

この記事でわかること
  • りんが「看護科教師」に抜擢されてから降格するまでの流れ(F25)
  • 山本さんの死とりんのトラウマ=「連れ出しの代償」の正体(F29)
  • 直美「看護婦辞めな」と捨松の新潟提案が意味するもの(F32)
  • りんが看護婦を続けられるのか、再起のカギはどこにあるのか
目次

指導者への抜擢と、突然の降格(F25)

りんの看護の道が新しい局面に入ったのは第60話。「看護しながら看護科の教師もやれ」という打診でした。バーンズ先生(エマ・ハワード)が「What is nursing?——問われているのは私自身」という本を残して帰国したあと、その問いを受け継ぐように、りんは指導する立場へと歩み始めます。

第13週(第61〜65話)では、新入生への指導やツヤ(東野絢香)の受講許可の直談判など、教える側としての奮闘が具体的に描かれました。しかし第65話でツヤが薬の投与忘れにより解雇されると、りんは「指導力不足」という言葉と、指導者としての責任の重さに直面します。そして第14週・第67話、見習いのヒデ(池田朱那)の退学の責任を問われ、りんは外科看護婦取締を解任され、一看護婦へ降格。取締は直美(上坂樹里)が兼任することになりました。

「自分が努力するより、下の者を育てる方がよっぽど難しい。答えが出るのはずっと先だ」(山本さん・第68話)

降格したりんを救ったのは、担当患者・庭師の山本辰治さん(51歳)の言葉でした。「答えが出るのはずっと先だ」というこの一言は、指導者としてのりんの将来への“遠い伏線”とも読めます。詳しい経緯は第13週まとめ記事第14週まとめ記事で。

山本さんの死と「連れ出しの代償」(F29)

第14週・第70話、がんが広がり衰弱する山本さんは「最後に一つ、嘘をつかせてほしい」と、花火の日に家へ帰ることを願います。りんはその願いを受け、山本さんを病院から連れ出す決断をしました。「看護婦としては間違っている」「人間としては正しい」——SNSでは賛否が爆発し、「クビになるのでは」という声も上がりました。

第15週・第71話、山本さんは妻テイさんへの「牛鍋の嘘」を貫いたのち、病院に戻った直後に「助けて…」の一言を残して息を引き取ります。取り乱して泣き喚くりんの姿は痛切で、「月曜から号泣」とSNSがざわつきました。

「命より重んじるものがあるという考えは否定しない。もし君が患者の友人ならわからなくない。だが、君は看護婦だ」(今井医師・第72話)

第72話、多田院長(筒井道隆)は「自宅に帰したことが死因とは言えない」とりんを不問とし、通常勤務を指示します。過去に一発解雇されたツヤとの差に「モヤッとする」という声も上がりました。一方で今井医師(古川雄大)は「医療に携わる者として失格だ。だが、君は看護婦だ」と正論を突きつけます。処分こそ免れたものの、りんは会計ミスや手の震え、フラッシュバックなどPTSD級のトラウマを抱えることに。「連れ出しの代償」は、処分ではなく“心の傷”という形で顕在化しました。この回の詳細は第15週まとめ記事で。

「看護婦辞めな」と新潟への道(F32)

第74話、フラッシュバックで手が震え看護に支障をきたすりんに、直美が「りん、看護婦辞めな」と告げます。突き放すような言葉は「冷たい」「権限がないのに」と賛否を呼びましたが、のちに捨松へ相談したうえでの「愛のムチ」だったと判明し、再評価されました。第75話では多江・トメの前で、外科看護婦取締として「今のりんには看護婦として働いてもらうわけにはいきません」と正式に宣告します。

そこへ捨松(多部未華子)が訪ね、新潟・上越の女学校の寮の舎監(住み込み・単身のみ、食事と住まい付き)という新たな仕事を提案。りんは家族と離れる決断を迫られ、「家族でゆっくり話してお返事したい」と時間を求めました。看護婦の道を一度離れるのか、その先で再起するのか——りんは大きな岐路に立っています。

【第16週・追記】第76話、りんと直美は本気の大喧嘩の末に和解し、直美が「私が家族になりたいの」「環ちゃんの2人目のお母さんになる」と宣言。娘・環(英茉)の「寂しいと悲しいは違うでしょ」という理解にも背中を押され、りんは新潟行きを決断します。第77話で病院を退職して門出——今井医師(古川雄大)は「患者と向き合えぬ者は去るべきだ。しかし共に働いてきた者としては寂しい」と情のある言葉で見送り、多江(生田絵梨花)は「ナイチンゲールになる」「取締になって戻ってきて雇う」と誓いました。第78話からは新潟・高越女学校の舎監として、女学生に英語や裁縫を教える新生活がスタート。看護婦の道をいったん離れたりんが、この“新しい風”のなかでどう再起へ向かうのかが最大の見どころです。詳しくは第16週まとめ記事で。

【第17週・追記】新潟で舎監生活を始めたりんですが、第17週・第83話で早くも“看護する人”としての本領を見せます。東京では相棒・直美が、実母と判明した柳川文(内田慈)の看取りに直面。直美の異変を察した娘・環(英茉)が「なほみさん大へんすぐかへってきて」と覚えたての字で手紙を送ると、りんは一目散に帰京します。母を前に看護婦として気を張り続ける直美へ、りんがかけたのは「看護婦しなくていい。こんな時くらい。子どもなんだから、直美さんの好きにしていい」という言葉でした。制度の上では看護婦の職を離れたりんが、いちばん近い人の心に寄り添う——“What is nursing?”への一つの答えを、肩書きの外で体現した場面です。さらに第85話の予告では、りんに「結婚しませんか」と切り出す人物(F37)まで現れ、看護の道と人生の岐路が同時に動き出しました。詳しくは第17週まとめ記事(公開後にリンク)で。

【第18週・追記】第18週「岐路にて」で、りんの看護の道は大きく動きました。第86話、新潟の黒川病院の跡取り・黒川先生(平埜生成)がりんを訪ね、「看護婦取締として黒川病院で働いてもらいたい」と直訴します。りんは「すみません。私にはできません」と断りますが、黒川は引き下がりません。

「僕は君のような、患者のために悩める人こそ現場にいるべきだと思うがね。ゆっくり考えてから返事を聞かせてほしい」(黒川先生・第86話)

この一言が効いているのは、りんが看護婦を離れた理由がまさに「悩みすぎたこと」だったからです。山本さんを連れ出し、失い、手が震えるようになった——それを欠点ではなく資質だと言い切る人物が現れた。りんを外から評価し直す“風”が、新潟から吹き始めました。

そして第89話、寮の女学生が発熱すると、りんの体は自然に動きます。「万が一うつる病気の場合もありますから、皆さんとは隔離したいので」と即座に指示し、布団を敷かせ、水と手ぬぐいを用意させ、脈を取り胸の音を確かめて風邪と判断。黒川からは「一ノ瀬さんが変わらず看護できることもわかった」と評価され、看護の基本を紙に書きまとめる仕事まで頼まれます。舎監として暮らしながら、りんはすでに看護の側へ半歩戻っていました。

決定的だったのは第90話。派出看護の会(恵風看護婦会)を立ち上げた直美に、りんが本音を明かす場面です。

「ごめん、嘘ついた。はじめは、ちょっと震えた。けど『環が熱を出した』って思ったら収まって。……もう、看護の仕事は嫌。病気や怪我の人を助けたいっていう気持ちは変わらない」(りん・第90話)

「手が震えるのはね、怖いんだと思う。人の命に触れるのが」——第15週から続いてきた震え(F29)の正体が、ようやく言葉になりました。ここで重要なのは、震えが「環のことだと思ったら収まった」という一点です。りんの手を止めていたのは技術でも度胸でもなく、相手を“患者”として遠くに置いてしまう距離感。逆に言えば、家族のように近づけたときには手が動く。第89話で黒川が「患者ではなく娘、家族と思い込むようにした」と語る場面とも響き合い、りんの再起のカギは「近づく看護」にあると読み取れます。

その直後、第90話のラストで新潟に赤痢が発生します。第19週「黎明の翼」の予告では、りんと直美が看護婦として現場へ向かう姿が映りました。感染症の現場は、まさに「人の命に触れる」場所です。震えを抱えたままのりんがそこに立てるのかどうか——看護の道の答えが、いよいよ試されます。詳しくは第18週まとめ記事(公開後にリンク)で。

直美もりんの手を離すていで、りんが辛さから解放されるよう、捨松を介して手を差し出したとも言える。(視聴者投稿)

【第19週・追記】赤痢の村で出た答え——「ちゃんと怖がって看護しましょう」(F29・F32回収)

第19週「黎明(れいめい)の翼」で、りんの看護の道はついに答えにたどり着きました。第91話、赤痢が発生した村への同行を求める黒川先生に、りんは「すみません。できません」と一度は断ります。しかし脳裏によみがえったのは、恩師の言葉——「看護とはなにか。問われているのは私自身」。りんは自らの意思で村へ向かい、女学生たちがなけなしの甘味を持たせて送り出しました。第15週から続いた「差し出せぬ手」が、ついに動き出した瞬間です。

「怖くていいんです。怖がらないと伝染してしまう。ちゃんと怖がって看護しましょう。」(りん・第92話)

避病院で怯える看病婦の染にかけたこの言葉は、そのままりん自身の再起の論理でした。恐怖を消すのではなく、恐怖を認めて正しく使う——手の震えの正体を「人の命に触れるのが怖い」と言語化できていたからこそ出てきた指導です。SNSでも「現場で人を育てている」「説得力がある」と絶賛されました。第93話では「看護をして、信じて命を預けてくれて……人を看てるんだなぁって」と、看護の手応えそのものを言葉にしています。

「ずっと。患者さんに触れるのが怖くて。だけど、アサさんに手を握られた時。その手があったかくて。生きてるんだなって。嬉しくなって」(りん・第95話)

そして赤痢収束後の第95話、りんは直美に震えの克服を告げ、「直美さんと。看護婦として、もう一度一緒に働きたい」と宣言します。第18週の考察で書いた「近づく看護」が、そのまま答えになりました。患者を“患者”として遠くに置くのではなく、手を握り合える距離まで近づいたとき、りんの手はもう震えない——F29はここで回収です。さらに黒川から「1年間だけ、うちで働かないか?看護婦を一人でも多く育ててほしい」という提案を受け、りんは黒川病院での1年を決断。第15週から追ってきた進路の伏線(F32)も、「看護婦を育てる」という新しい役割で決着しました。1年後には、直美が立て直すと誓った恵風看護婦会(F38)との合流が待っています。

【第20週・追記】帰京、そして「これでも今幸せなんです」

第20週「家族のかたち」は、黒川病院での1年を終えたりんの帰京から始まります(第96話)。さっそく恵風看護婦会で働き始め、泊まり込みの依頼にも「私が行く」と即戦力ぶりを発揮。「うまくいってなくて」と直美が明かしていた会(F38)に、りんという追い風が吹き込みました。折しも「お金がなくても看てもらえると聞いて」と登勢(前田亜季)が訪れ、念願の無償看護が船出します(第96〜97話)。予告の謎ワードだった「無料で看護」(F41)は、りんの合流と同じ週に実現したことになります。

「これでも今幸せなんです」(りん・第97話)

注目したいのは、横沢(井上祐貴)の3度目のプロポーズ「私は、間違いなく出世します」「必ず幸せにします」への、この返答です。誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分の力で幸せをつかむ——1年かけて看護の道へ戻ってきたりんだからこそ言える言葉であり、看護婦復帰(F32)と地続きの人生観です。第99話では、結婚をためらう直美に「お嫁に行ったって、家族なのは変わらないよ」と背中を押し、雨の中ずぶ濡れのシマケンには傘を差しかけて「待ちます」。看護でも恋でも“対等に支え合う”というりんの答えが、一本の線でつながった週でした。

そして第100話、直美は小川吾郎(甲斐翔真)と結婚。祝福の直後の次週予告には、明治27年・日清戦争の足音と「長期的な看護が必要となる」という言葉が流れました(F42)。恵風看護婦会の看護が、いよいよ時代の大きなうねりと向き合うことになりそうです。詳しくは第20週まとめ記事(公開後にリンク)で。

【第21週・追記】「この手は患者さんに使いたい」——愛と看護の定めと選択

第21週「定めと選択」で、りんの看護の道は最も重い選択を迫られました。連載取り消しで小説家の夢を断たれたシマケン(佐野晶哉)に、りんは「何者でなくたって構いません。私にはただ愛おしい人です」と全面肯定の言葉を贈ります(第102話)。しかし兄の失踪と借金で浜松へ帰ることになったシマケンから「一緒に来てほしい」と請われ、「シマケンさんと一緒に行きたいです」とまで口にしました。それでも続いて出てきたのは、しのぶ(木越明)が妊娠で退職したばかりの看護婦会のこと、増えていく患者のこと——りんの心は、すでに答えを知っていたのかもしれません。

「この手は患者さんに使いたい」(りん・第104話)

シマケンは「りんさんの手は、大勢の人のために働く素敵な手だ」と告げて身を引き、「さよなら」と去りました(第104話・F43回収)。注目したいのは、同じ回でりんが見せた看護です。手のこわばりで食事が進まない佳枝(相田翔子)に「できないこと」を突きつけず、スプーンに包帯を巻いて「できる」を取り戻す——第19週で「近づく看護」を取り戻したりんの手が、今度は道具の工夫で患者の尊厳を支えました。涙とともにこぼれた「この手は患者さんに使いたい」を、直美は「私はこの手が好き。強いよ」と握りしめて受け止めます。編集長がシマケンに突きつけた「強さがない」という言葉と対をなす、“手の強さ”の物語でした。

そして2年後(第105話)。日清戦争の開戦が迫り、虎太郎(小林虎之介)は想いを告げないまま戦地へ志願、多江(生田絵梨花)は看護婦取締として広島の陸軍病院へ向かいます(F42)。「戦争がひとたび始まれば、必ず看護が必要になる」——原案「明治のナイチンゲール」が示すとおり、りんの看護の道は、いよいよ戦争看護という最大の舞台へ向かいます。詳しくは第21週まとめ記事(公開後にリンク)で。

【第22週・追記】戦争が奪った「明るい未来」——りんが支えた直美の喪失

第22週「明るい未来」は、りん自身よりも相棒・直美(上坂樹里)に試練が訪れた週でした。りんは直美の体調の変化にいち早く気づいて妊娠を見抜き(第106話)、妊娠中の立ちくらみを案じて小川家を訪ねます(第107話)。いちばん近い人の小さな変化を捉える観察眼は、第19〜20週で取り戻した「近づく看護」が日常のなかでも働いている証でした。

しかし喜びは長くは続きません。夫・吾郎(甲斐翔真)が出征し(第108話)、男の子「明」を出産した直後に、戦傷死の報せが届きます(第109〜110話)。死因は戦闘ではなく脚気。広島の陸軍予備病院で吾郎を看取った多江(生田絵梨花)が、最期の様子と遺品を直美に届けました。気丈に振る舞う直美を、りんと一ノ瀬家はそっと支えます。かつて実母・文を看取る直美に「看護婦しなくていい。こんな時くらい」と寄り添ったりんの言葉(第17週)が、今度は相棒の喪失という形で静かに響く週になりました。

戦争看護という最大の舞台は、まず身近な家族の死という形でりんたちの前に立ちはだかりました。「戦争がひとたび始まれば、必ず看護が必要になる」——第21週に平蔵(太田光)が語った言葉が、いちばん残酷なかたちで現実になったのです。広島では多江が理不尽な扱いと闘い、大山捨松(多部未華子)の慰問がそれを支えました(F38)。恵風看護婦会と戦争看護がこの先どう交わっていくのかが、りんの道の次の焦点です。詳しくは第22週まとめ記事(公開後にリンク)で。

【第23週・追記】「おかえり」と「看護婦じゃなくても構いません」——清風を大きくする看護

第23週「歩々清風(ほほせいふう)」は、りんの看護が「治す手」から「受け止める手」へと広がった週でした。第111話、日清戦争から帰還した虎太郎(小林虎之介)は、背中を丸め、カラスの鳴き声にさえ肩を震わせる姿でりんの前に現れます。「人の生き死には、くじ引きみたいなもんだ。頑張ったやつが報われるわけじゃない」——努力を信じてきた幼なじみの価値観が崩れた告白に、りんは診断も励ましもしません。血のしみが残るハンカチを静かに洗い流し、ただ「おかえり、虎太郎」と告げました。

「おかえり、虎太郎」(りん・第111話)

この一言が看護の物語として重要なのは、当時「病名のない傷」を前にしたりんの選択だからです。第19週で「ちゃんと怖がって看護しましょう」と恐怖を否定せずに使う看護を体得したりんは、ここでも虎太郎の弱さを否定しません。SNSでは「おかえり」を、心身の帰還だけでなく“栃木にいた頃の純朴な虎太郎への帰還”というダブルミーニングと読む声が広がりました。同話では捨松(多部未華子)が直美を訪ね、「この戦争がきっかけで看護婦というものが世間に広く知られるようになりました。思わぬ方から風は吹くものね」「これからの看護婦をあなたたちに託します」と未来を委ねます。直美の「私たちでこの風を大きくしていきます」が、この週の看護の方向を決めました。

ところが4年後(第112話)、その「風」は思わぬ形で問題を生みます。看護婦が全国3000人規模に増える一方、無資格の女性を「看護婦」と称して派出し高額を請求する業者が乱立し、恵風看護婦会と混同される噂まで広がりました(F51)。噂の正体は寛太(藤原季節)。「知ってるだろ?看護は儲かる」と開き直る寛太に、りんは「看護はただの商売じゃありません」と反論し(第113話)、直美とともに衛生局の柳生(中村倫也・F40)へ取り締まりを求めます。しかし第114話、寛太のもとで働いていたのは、第11週で救ったはずの元患者セツ(村上穂乃佳)でした。

「これで分かっただろう?あんたが目の敵にしてるのは、そういう貧しい女たちだ」(寛太・第114話)

りんが「正しさ」で排除しようとした相手の中に、自分たちがかつて救った人がいた——この構図は、第13週の真風の予言「正しいことが間違いになる」(F27)を思い起こさせます。りんの答えは第115話で出ました。セツの受け持ち患者が急変し、偶然いたりんが処置。患者は軽い脱水症で済みます。ここでりんはセツを責めず、まず「セツさんが水を飲ませたから、軽い脱水症で済んだんです」と、セツの手がしたことを見つめました。その上で「看護は命に関わる仕事です」と、厳しさも省きません。SNSでは「責める前に、助かったと人の手を見つめる目。りんらしい」という声が上がりました。

「看護婦じゃなくても、構いません。考えてみてください」(りん・第115話)

「字も読めなきゃ、仕事も続かない。私はあなたたちとは違う」と辞意を示すセツに、しのぶ(木越明)は「どんな女でも生きてればいろいろある。けどそれをはねっ返さなきゃ、いつまで経っても女の立つ瀬がないじゃない」と一喝。そしてりんは、看護婦になれとは言わず「看護婦じゃなくても構いません」と住み込みを提案しました(F52)。第19週でりんが取り戻した「近づく看護」は、患者だけでなく“看護婦になれない女性”にまで届くものになったのです。寛太の「あんたが目の敵にしてるのは貧しい女たちだ」への答えが、排除ではなく受け入れだったこと——それが、捨松から託された「風を大きくする」看護の第一歩でした。同週ラストでは約6年ぶりにシマケン(佐野晶哉)が東京に戻り(F46回収)、次週予告には元夫・亀吉(三浦貴大)の姿も。りんの看護の道は、人生の道とふたたび交差していきます。詳しくは第23週まとめ記事(公開後にリンク)で。

【第24週・追記】「病気は治せない」と「しっかり考えなさい」——娘に看護を強いない母の看護

第24週「環(たまき)」は、りんの看護が初めて「娘の目」を通して描かれた週でした。第116話、女学校の最上級生になった環(瀧七海)は、絵を描くことに夢中になりながらも進路に迷い、母の派出看護を見学したいと願い出ます。第117話、りんが環を連れて向かったのは、リウマチを患う佳枝(相田翔子)の家。第21週でりんがスプーンの工夫を凝らした、あの佳枝です。自分で食べたいという佳枝の気持ちを尊重し、りんはあえて手を出さずに見守ります。

「病気は治せない。だけど患者さんの気持ちを大事にすることはできる」(りん・第117話)

この言葉は、第19週の「ちゃんと怖がって看護しましょう」、第23週の「看護婦じゃなくても構いません」に続く、りんの看護観の到達点のひとつです。バーンズ先生の「What is nursing?」(第9週)に対して、りんはいま「治すこと」ではなく「気持ちを大事にすること」と答えている。環はその姿に静かに戸惑います。母の看護は尊敬できる。けれど、自分がそれをやりたいのかは分からない——この戸惑いが、週の後半の告白へつながっていきます。

同じ週、りんの看護は思わぬところから評価を受けます。第118〜119話、りんの元夫・亀吉(三浦貴大)が、亡き母・貞(根岸季衣)から環への手紙を届けに現れました(F54)。第4週で環を誘拐し、離縁とともに退場した男は「酒はやめた」と告げ、りんは「見ればわかります」とだけ返します。そして亀吉が伝えたのは、貞が遺した「日本一の看護婦の娘」という言葉でした。かつてりんを追い出した奥田家の姑が、最期には孫を「日本一の看護婦の娘」と呼んでいた——りんの看護の道は、本人の知らないところで元姑の評価まで変えていたのです。

「お母さんが立派すぎて、どうしたら喜んでもらえるんだろうって考えちゃって、苦しかった」(環・第120話)

そして第120話、環は「お母さん、私、絵を仕事にしたいの。やらせてください」と打ち明けます。「日本一の看護婦」と呼ばれる母の背中は、娘にとって誇りであると同時に重圧でした。ここでりんが選んだのは、看護の道を継がせることではなく、「どうやって仕事にするのか、しっかり考えなさい」と娘の道を認めることでした。第115話で元患者のセツに「看護婦じゃなくても構いません」と告げたりんは、自分の娘に対しても同じ選択をしたのです。看護を「押しつけない」こと——それ自体が、りんが佳枝の家で環に見せた「患者さんの気持ちを大事にする」看護の、母娘への応用でした。SNSでは「切なさと愛おしさが同時に押し寄せる」と母娘の対話に涙する声が集まり、シマケン(佐野晶哉)の「僕が? 笑うわけない!」(第119話)とあわせて、環の背中を押した大人たちへの称賛が相次ぎました。環の画業(F56)と、次週予告で示されたシマケンの体調の不安(F55)が、りんの看護の道にどう関わってくるかが次の焦点です。

りんは看護婦を続けられるのか——再起のカギを考察

第15週の週タイトル「差し出せぬ手」が示したように、りんは長く「踏み込めない領域」の前で立ち止まってきました。バーンズ先生の「What is nursing?」、山本さんの「答えが出るのはずっと先だ」、今井医師の「君は看護婦だ」、そして黒川先生の「悩める人こそ現場にいるべきだ」——積み重ねられた問いと言葉が、いま一斉に再起の伏線として効き始めています。第18週で震えの正体が「人の命に触れるのが怖い」と言語化され、第19週「黎明の翼」で「それでも触れられるか」という最後の問いに、りんは赤痢の現場で「ちゃんと怖がる」という答えを出しました。積み重ねられた問いと言葉が、一斉に回収された週だったと言えます。その1年は第20週で描かれ、りんは帰京して恵風看護婦会に合流——無償看護の船出を直美とともに支え始めました。次の焦点は、日清戦争の足音(F42)が近づくなかで、恵風看護婦会の看護がどう時代と向き合うのか。そして、避病院でりんたちの看護を見届けた内務省衛生局・柳生藤次(中村倫也)の「上には報告しておく」(F40)は、第23週・第113話で衛生局を訪ねた直美・りんに「まずは実態を調査」と応じる形で再登場を果たしました。その調査が寛太の会(F51)と恵風看護婦会にどう返ってくるか、そして帰還した虎太郎の心の傷(F50)にりんがどう関わっていくかが、看護の道の次の焦点です。

りんの看護の道・伏線まとめ
  • [F25] 看護科教師への抜擢(第60話)→ ツヤ解雇・ヒデ退学の責任で取締降格(第67話)
  • [F29] 山本さんの連れ出し(第70話)→ 死とりんのPTSD級トラウマ(第71〜72話)。院長は不問も今井医師「君は看護婦だ」
  • [F32] 直美「看護婦辞めな」(第74話)→ 捨松の新潟・女学校舎監の提案(第75話)→ 直美「2人目の母」宣言(第76話)・りん退職と門出(第77話)・新潟の女学校舎監生活スタート(第78話)→ 環のSOSで一時帰京し文を看取る直美に「看護婦しなくていい」と寄り添う(第83話)。看護をいったん離れつつ“人を支える”形で看護観を体現 → 黒川先生から黒川病院の「看護婦取締」にスカウトされるも保留(第86話)、寮の女学生の発熱に隔離・検脈で的確に対応(第89話)
  • [F29] 手の震えの正体が判明(第90話)——「怖いんだと思う。人の命に触れるのが」。ただし「環が熱を出した」と思った瞬間に収まった=“近づく看護”が再起のカギ
  • [F39] 新潟の赤痢は第19週で収束(死亡率一割に抑制)。りんは避病院で「ちゃんと怖がって看護しましょう」と現場を立て直した(回収・第94話)
  • [F29] アサに手を握られ「あったかくて。生きてるんだなって」——命に触れる怖さを克服(回収・第95話)
  • [F32] 黒川「1年間だけうちで」を受諾し、黒川病院で看護婦育成へ。1年後は恵風看護婦会(F38)との合流が焦点(回収・第95話)
  • [F32・後日談] 1年後の第20週・第96話で帰京し、恵風看護婦会へ合流。無償看護の第一号(F41回収)を直美とともに支える
  • [F08/F33] 第99話、雨の中シマケンに傘を差しかけ「待ちます」。横沢の3度目のプロポーズには「これでも今幸せなんです」——自分の力で幸せをつかむ人生観が看護の道と重なる
  • 再起のカギは「近づく看護」——バーンズ先生・山本さん・今井医師・黒川先生の問いに、りんは第19週「ちゃんと怖がって看護する」という答えで応えた
  • [F43] 第21週・第104話、シマケンとの別れ——「一緒に行きたい」と伝えながらも、最後に選んだのは「この手は患者さんに使いたい」という看護の道。直美「私はこの手が好き。強いよ」
  • 2年後、日清戦争の足音(F42)——虎太郎は戦地へ、多江は広島へ。戦争看護がりんの道の次の舞台に
  • [第22週] 相棒・直美の妊娠にいち早く気づき(第106話)、立ちくらみを案じて訪ねる(第107話)。しかし出征した夫・吾郎が脚気で戦傷死(第109〜110話)——りんと一ノ瀬家は気丈な直美を支える。戦争看護は「身近な家族の死」という形でまず訪れた
  • [第23週/F45・F50] 帰還した虎太郎の「人の生き死にはくじ引き」に、りんは血のしみのハンカチを洗い流し「おかえり、虎太郎」(第111話)——病名のない傷を否定せず受け止める看護。捨松「これからの看護婦をあなたたちに託します」
  • [第23週/F51・F52] 4年後、寛太の派出看護婦会に元患者セツ。「あんたが目の敵にしてるのは貧しい女たちだ」(第114話)→ 患者急変をりんが処置し「セツさんが水を飲ませたから軽症で済んだ」。しのぶの一喝を経て「看護婦じゃなくても構いません」と受け入れ(第115話)——「近づく看護」が“看護婦になれない女性”にまで届いた
  • [第24週/F53・F54] 娘・環に佳枝の派出看護を見せ「病気は治せない。だけど患者さんの気持ちを大事にすることはできる」(第117話)。元姑・貞の遺した「日本一の看護婦の娘」(第119話)。環「お母さんが立派すぎて」に「どうやって仕事にするのか、しっかり考えなさい」(第120話)——看護を娘に強いない母の選択。「看護婦じゃなくても構いません」の母娘版

りんの看護の道の“今”は、各週まとめ記事と伏線まとめハブで随時更新しています。あわせて、相棒・直美の出生の謎もチェックすると、二人の「バディ」の物語がより深く楽しめます。

【作品情報】放送:NHK総合 月〜金 8:00/脚本:吉澤智子/主題歌:Mrs. GREEN APPLE「風と町」/主演:見上愛(一ノ瀬りん)・上坂樹里(大家直美)

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