「呪われた女」──そんな不穏な言葉とともに、第103話に登場した吉野イセ(おいせさん)が早くもSNSで大きな話題を呼んでいます。ばけばけ 第21週 第103話では、五高の廃校危機を背景にヘブンが「物書きとして生きていく」という決意を固めるなか、司之介がギャンブルの失敗を家族に告白する胸アツ(?)な場面、そしてヘブンのために集められた言い伝えの語り部たちが予想外の展開を見せました。笑いあり、ツッコミあり、そしてじんわり来る人情味あり──15分がぎゅっと詰まった一話でした。
「ばけばけ」第21週第103話 あらすじ
熊本五高の廃校の議が現実味を帯びるなか、ヘブンは同僚ロバートから東京の学校への転任話を持ちかけられますが、物書きとして生きることを選ぶと宣言します。一方、司之介は荒金に預けていた金を投機で失ったことを家族に告白。フミたちはあきれながらも、家族のために行動しようとしていた気持ちを受け止めます。翌日、ヘブンの執筆ネタ探しのために集められたのが、言い伝えに詳しい「吉野イセ」と「村上茂吉」の二人。ふすまにまつわる死の言い伝え、人のぬくもりにまつわる不幸の言い伝えが語られますが、ヘブンの「なぜですか?」という合理主義的な問いかけが場を混乱させ、さらに茂吉の話はすでに家族が知っている内容で──と、言い伝え発表会はまさかの不発に終わります。
荒金の「小話告白」が巧妙すぎる──司之介への謝罪がこんなに笑えるのはなぜ?
今週のばけばけで最もSNSが沸いたシーンのひとつが、荒金九州男(夙川アトム)による「小話で包んだ謝罪告白」でした。
司之介(岡部たかし)から預かった金を相場で失ってしまった荒金。直接謝るのではなく、まず「こんな話がある」と司之介に語りかけながら、回り道をして自分の失敗を打ち明けるという迂回戦法を取ったのです。
その小話の内容はこうです。
「ある男が、人から頼まれ事をした。それは厄介で、男は断りたかった。ばってん、どうしてもと泣きつかれ、しぶしぶ引き受けた。」
話が進むにつれ、男は失敗して逃げ出そうとします。しかし、ある子の言葉で思いとどまります。
「大丈夫。父上のように正直に生きていくけん。」
この一言で目を覚ました男は、すべてを正直に話すことを決意する──そんな話の締めくくりに、荒金はさらりとこう言い放ちます。
「今の話は、わしとあんたのことたい。」
司之介の「嘘じゃろ。嘘じゃろうな!」という絶叫も無理はありません。小話に感動させられかけたのに、それが自分への謝罪だと知った瞬間の裏切られた気持ち──しかしどこかおかしみもある、ばけばけらしいシーンでした。
「わしとあんたのことたい」の一言で全部バレる
この「小話告白」が秀逸なのは、荒金が自分自身の失敗を客観的な物語として語ることで、言い訳よりも先に「反省と決意」を見せているところです。物語を通じて打ち明けるという手法は、この作品が描いてきた「言葉と物語の力」というテーマと見事に呼応しています。
ヘブンが書こうとしている「日本人の暮らしや心にまつわる物語」とも重なる構図で、荒金のこの告白スタイル自体が、小泉八雲的な語りの原型のようにも見えてきます。
「パパサン調子ノルナイ」──ヘヴンのひと言が刺さった理由
さらに笑えたのが、ヘブン(トミー・バストウ)が言い放った一言です。
「パパサン調子ノルナイ。」
「申し訳ない。本当に申し訳ない。」
罪悪感と愛嬌と外国人ならではのカタコト日本語が混ざり合って、SNSではこの「パパサン調子ノルナイ」が切り取られて大量に拡散されました。叱責でもなく慰めでもない、絶妙なポジションからのひと言が、この場面の空気を一気に軽くしていました。
ばけばけ おいせ急上昇!「呪われた女」吉野イセ登場の衝撃
第103話放送後、Googleサジェストで「ばけばけ おいせ」が急上昇しました。それほどまでに視聴者の目を引いたのが、吉野イセ(芋生悠)の登場シーンです。
物語冒頭、トキ(髙石あかり)がネタ探しの道中で出会った貧しい身なりの女性──それがイセでした。言い伝えに詳しいと知ったトキが話しかけると、そこへ薪を背負った村上茂吉(橋本淳)が通りかかり、突然こう言い放ちます。
「このおイセっちゅう女は呪われた女たい。」
動揺するトキとイセに対して、イセは静かに返します。
「ちょっと茂吉さん。人の噂は稲を枯らしますよ。」
すると茂吉はひるまず、
「何を。枯れた稲でも赤子は育ったい。」
とさらりと返す。このやり取りだけで、イセと茂吉という二人のキャラクターの間にある長い歴史と複雑な関係性が匂い立ちます。不穏でありながらどこか滑稽で、怪談的な空気と生活感が同居した、ばけばけらしい絶妙な導入でした。
「人の噂は稲を枯らしますよ」──イセと茂吉のやり取りにトキが目を輝かせる
「人の噂は稲を枯らす」というイセの言葉は、単純な諺のように聞こえますが、呪われているという噂を立てられてきた自身の境遇への皮肉でもあります。それに対して「枯れた稲でも赤子は育つ」と返す茂吉の言葉には、荒々しさの中に妙な温かみがあります。
トキがこのやり取りに「面白い」と目を輝かせた気持ち、とてもわかります。怪談の入口としてこれ以上ない掴みでした。
期待と現実のギャップ──語り部が「おっさん」だった件
翌日、ヘブンのために家族が集めたネタ提供者として、イセと茂吉が同時に登場する場面では予想外のハプニングが。松野家と丈・正木がそれぞれ「言い伝えに詳しい人物」を連れてきたところ、なんと二人とも同じ人物を探していたのです。
「同じたい。」
茂吉のこの一言が場を凍らせ、直後に笑いに変える。SNSでは「国宝級の語り部を期待したのにおっさんが来た」という声が多く上がっており、このギャップ演出は狙い通り視聴者の心を掴んでいたようです。
ふすまの言い伝えとヘブンの「なぜですか?」──合理主義vs言い伝え文化の衝突
いよいよ始まった言い伝え発表会。まずイセが語り出したのは、ふすまにまつわる言い伝えです。
「旦那様は襖を強く開けたことはございませんか?こぎゃんふうに襖を強く開けてとんと音を立てると、1年、また音を立てるとまた1年、その者の死が早まると言われております。」
夜に爪を切ってはいけないという言い伝えと同じ系譜の、行動を戒める古来の口伝えです。「日本らしい」とヘブンも興味を示しました。しかしここで事件が起きます。
「言い伝えは言い伝えというか」──おいせさんが困惑した瞬間
ヘブンが放ったのは合理主義者らしい問いかけでした。
「なぜですか?なぜ襖落とすと人死ぬ早まるですか?」
イセは困惑しながら答えます。
「ばってん、言い伝えは言い伝えというか。疑問は挟まんもんですけん。」
さらにヘブンは続けます。
「本当に死ぬ早まった人いるですか?」
イセが「それは……ばってん、それも本当に早まったかどうかは誰にもわかりませんけん」と返すと、ヘブンは「なるほど」とだけ答えました。
この場面、ヘブンが悪意を持っているわけではないのですが、言い伝えの本質は「理由より戒め」にあるのに合理的な根拠を求めてしまうため、イセが完全に困惑してしまっています。SNSでも「イセさんへの合理的な質問攻めがかわいそうだった」という声がある一方で、「ヘブンの視点は外国人作家として自然」という擁護派も。文化の橋渡しをテーマにするこのドラマならではの、小さいけれど鋭い対立構図でした。
夜に爪を切ってはいけないという言い伝えが「暗いところで刃物を使うな」という安全上の理由から生まれたように、ふすまの言い伝えにも静かに生活する礼儀作法的な背景があるはずです。しかしそれを「なぜ」と問われると答えに詰まるのが言い伝えの面白いところ。ヘブンが求めているのはまさにそういった「なぜ」の先にある物語なのかもしれません。
人のぬくもりの言い伝えは「既知ネタ」だった…
続いて茂吉が語ったのは、人のぬくもりにまつわる言い伝えです。
「人が座ったところというのは温もるもんですが、その温もりが残ってるうちに、そこに別の者が座ると、なんとその者の不幸せを見なせよと言われております。」
こちらはむしろ心温まる感じのする話です。さらに茂吉は続けます。
「座る前にそこをトントンと叩くと、不幸せを背負わずに済むと言われており。」
ところがここで予期せぬ声が上がります。
「知ってます。」
松野家たちはすでに知っていたのです。以前、うめが家族に伝えていた話と同じ内容でした。茂吉の「同じたい」というひと言とあわせて、この言い伝え発表会はほぼ不発という結果に。ヘブンの執筆ネタ探しは次回以降に持ち越されましたが、それでもこの空振りのプロセスそのものが、どこかほのぼのとした人間味に溢れていました。
ヘブン、「物書きとして生きていく」──廃校危機の中で固まった決意
第103話のもうひとつの軸は、ヘブンの進路選択です。熊本五高の廃校の議が現実的になる中、同僚のロバート(ジョー・トレメイン)から東京の学校への転任を打診されます。
「You know, this place closes. I’ve been offered a teaching position at a school in Tokyo. Want me to ask about a job for you?」
しかしヘブンの答えははっきりしていました。
「No, no, thank you. If this really is the end, I’ll just have to make my way as a writer.」
「書けるのか?(Can you write?)」と問われても、「今はまだ書けないが、学校が終わるなら…」と迷いを見せつつも、物書きへの道を選ぼうとするヘブン。
その直後に司之介の告白小話を聞いたことで、ヘブンの中に「日本人の心を書きたい」という気持ちがさらに強まります。家族のために嘘をついた所在たちの話、父のように正直に生きると言った子の言葉──そういった日常の中にある人情を拾い上げることが、ヘブンが目指す物書きの姿であることが、この一話を通じて静かに描かれていました。
まとめ──103話の見どころと今後の伏線
- 荒金の「小話告白」が秀逸。司之介への謝罪を直接ではなく物語を通して打ち明けるという手法が、ドラマ全体の「語りの力」テーマと呼応していました。
- 「ばけばけ おいせ」がSNSで急上昇。吉野イセ(芋生悠)の不気味さと意外な魅力が視聴者を惹きつけており、「呪われた女」という謎の真相は今後の注目ポイントです。
- ヘブンの「なぜですか?」という合理主義的な問いかけが言い伝えの本質を揺るがす。外国人作家の目線から見た日本の民俗文化の「なぜ」が、今後の執筆テーマに直結しそうです。
- 言い伝え発表会は不発に終わったものの、イセと茂吉というキャラクターは次回以降も関わり続ける予感。特にイセの「呪われている」という過去の詳細が語られるかどうかが注目です。
- ヘブンの物書き宣言が確定。廃校という逆境を機にキャリアを転換するヘブンの姿は、小泉八雲モデルとしてのドラマの核心に近づいてきています。
- 「枯れた稲でも赤子は育ったい」という茂吉の言葉が密かに印象的。不幸の中でも命は続くという逞しさが、このドラマの根っこにあるメッセージと重なります。
ばけばけ 第21週 第104話は2月26日(木)放送予定。吉野イセと村上茂吉の言い伝えがヘブンの作家魂に火をつけるのか、引き続き目が離せません。
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