2025年2月20日放送、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第20週「アンタ、ガタ、ドコサ。」の第100話は、節目の放送回に相応しい温かさあふれる一話でした。焼き網の紛失をきっかけに松野家に漂っていた疑心暗鬼の空気。自分が疑われていると感じたおくまちゃん(夏目透羽)が女中を辞めると言い出し、誰もが必死に引き留めようとするなか、書生の丈(杉田雷麟)が仕掛けた「懐中時計がなくなった」という優しい嘘が、場の空気を一変させます。さらに正木(日高由起刀)もポケットの財布を「度忘れ」していたという連鎖反応が起き、ヘブン先生(トミー・バストウ)は「日本人の嘘、心あります」と滞在記の執筆を再開。長らく解決しなかった焼き網の謎も、まさかの「隙間に落ちていた」というオチで幕を閉じます。100話の節目にふさわしい、笑いと涙と人情が詰まった神回でした。
「ばけばけ」第20週第100話 あらすじ
焼き網紛失騒動で疑いをかけられていると感じたおくまちゃんが女中を辞める意志を示す。トキ(髙石あかり)やヘブン(トミー・バストウ)が必死に引き留めるも、家を飛び出そうとするおくまちゃん。そこへ丈(杉田雷麟)が「懐中時計が盗まれた」と告げる。しかし盗難時刻におくまちゃんのアリバイが成立し、彼女の潔白が証明される。実は丈の「盗難」はおくまちゃんを守るための嘘だった。ヘブンと正木(日高由起刀)がその真意を確認する間、今度は正木の財布が発見される。財布はなんと正木自身のポケットの中に。そして行方不明だった焼き網は、釜の「隙間」に落ちていたことが発覚。すべての謎が解け、ヘブン先生は「日本人の心」を確かめ、スランプを抜け出した執筆を再開する。
おくまちゃんの決意──焼き網事件が生んだ疑心暗鬼の爆発
今週ずっと松野家に漂い続けていた焼き網紛失騒動。盗んだ犯人が誰なのかわからないまま、家の中でじわじわと疑心暗鬼が広がっていきました。そのなかで一番傷ついていたのが、女中のおくまちゃんでした。
冒頭から場の空気は重く、おくまちゃんは女中を辞めると宣言します。彼女がそう感じてしまったのも無理はありません。新参者の自分が一番疑われやすい立場にある──そんな思い込みが彼女を追い詰めていたのです。
トキはすかさずフォローに入ります。「あなたのせいだないし、そげなことないわね。」しかし、おくまちゃんの心はすでに決まっていました。「うん。新しかもんば買ってきました。これまで、大変お世話になりました」と、替わりの道具まで用意していた。その準備の几帳面さが、逆に彼女がどれほど真剣に悩んでいたかを伝えてくれます。
司之介も「おい、くま!」、トキも「やめて!おくまちゃん、待って!」と声をあげ、全力で引き留めようとします。おくまちゃんは聞き入れない。15分という短い朝ドラの尺の中で、このシーンの切迫感は抜群でした。
おくまちゃんを追いかけるトキとヘブン──「くまー!」の叫びに胸が痛い
トキが「くまー」と叫ぶ声に、胸を締め付けられた視聴者も多かったのではないでしょうか。おくまちゃんは熊本に来るまで、しなくていい苦労をたくさん経験してきた子です。この家にようやく居場所を見つけたのに、また一人になってしまうかもしれない。
家族同然の関係だからこそ、「辞められてしまうかもしれない」という焦りがリアルに伝わってきました。
丈が仕掛けた「優しい嘘」──懐中時計がなくなった、という作戦の深さ
そんな緊迫した空気に変化をもたらしたのが、書生の丈(杉田雷麟)でした。
「ちょっと、ちょっといいですか?」
丈が割り込んできたとき、誰もが「また問題か」と思ったはずです。しかし、彼が告げた「懐中時計がなくなった」という話は、場を混乱させるためではなく、おくまちゃんを守るために考え出されたものでした。
丈の説明によれば、懐中時計が見当たらなくなったのは、おくまちゃんが買い物に出ていた時間帯のこと。つまり、おくまちゃんには完璧なアリバイがある。しかも先生(ヘブン)とトキさんも散歩で不在だったため、残された面々にも疑いの目が向きます。
「そうではありません。ただ、おくまちゃんではないので、女中を辞める必要などないと。誰も君だと思ってないから。」
この一言が、おくまちゃんの心をほどく鍵になりました。「ありがとうございます。皆さんに、そぎゃん言っていただけるなら」──ようやく笑顔を取り戻すおくまちゃんに、思わず視聴者もほっと息をつきます。
「もちろん、彼女が焼き網を盗んだり、捨てたりしてたら、それは良くないことだと思う」
丈が正木に嘘のからくりを打ち明けるシーンは、この回のなかでも特に印象的でした。
「これは、まあ、なんて言うか、おくまちゃんのためだ。彼女はいい子だし、頑張ってるし。この家に来るまで、しなくていい苦労もいっぱいしてきたって聞いてるだろう。」
丈は焼き網を巡る問題を軽く見ていたわけではありません。「もちろん、彼女が焼き網を盗んだり、捨てたりしてたら、それは良くないことだと思う。でも、そんなことで辞めてほしくないし」──善悪をきちんと踏まえたうえで、それでも彼女に辞めてほしくないという思いを優先させた。そこに丈という人物の誠実さがにじみます。
「じゃあ、そのために彼女がいない時間に盗られたっていう嘘を?」と正木が確認すると、丈は静かに「うん」と答えます。この短い「うん」の重さが、台詞の力を物語っていました。
おくまちゃんのアリバイを証明したロジックの絶妙さ
丈が嘘をついたもう一つの狙いは、疑いをうやむやにすることでした。「だって、俺の嘘のせいで、おじ様とおばさまとお前が疑われたまんまだ。だから、疑われた三人をどう助けるか」と、さらなる解決策を模索しています。疑いをかけられた三人──ヘブン、トキ、正木──を助けるために、どう動くかを考えていた。その段取りの細やかさが、「次代の大盤石」と称される正木に刺激を与えることにもなります。
正木のポケットから財布が!「秀才なのに意外と抜けちょるの」で笑いと涙
司之介、フミがお互いを疑い合い始めるなか、正木(日高由起刀)が新たな「事件」を申告します。「先ほどここでお二人がお話をされている最中の出来事でした」──ヘブンとフミのいる場所で財布がなくなった、ということは二人にはアリバイがある。そして丈も厠に行っていた。
一同が再びくまを疑いくまの部屋に入るとぐっすりと眠っているくま。くまを見て「くま、違う。」とヘブン先生が言う。再び皆で考えると、丈が懐中時計が先ほど見つかったことを報告します。すると続いてなんと「財布もありました」との報告。探せば出てきたのです──正木自身のポケットの中から。
「お前、秀才なのに意外と抜けちょるの。」
司之介のツッコミに、場全体が一気に緩む瞬間でした。丈が「いや、そうなんですよ、こいつ。」と言うと、「人のこと言えないだろ、お前」と正木が返すと、丈も笑い出す。思いつめた空気が、笑いによって完全に溶けていく。このコミカルな流れの巧みさは、脚本の品の良さを感じさせます。
丈×正木、二つの嘘が生んだ奇跡の連鎖
丈が仕掛けた懐中時計の嘘と、正木の「財布の度忘れ」が重なったことで、図らずも全員のアリバイが成立するという完璧な結末が生まれました。これを受けてヘブン先生が「丈の嘘を、正木の嘘を。熊本、何もない。それも嘘。日本人の心。あります。どこでも、心あります」と語るシーンは、この回のハイライトと言えます。
二人の若者が自然に行動した「優しい嘘」が、スランプに陥っていたヘブンの創作意欲を呼び覚ます──こんな贈り物のような展開は、100話という節目を祝うかのようでした。
「女中いっても、わしらの家族だけん」──司之介の一言が心に刺さる
おくまちゃんが「ありがとうございます」と胸をなで下ろしたとき、司之介はこう言い切ります。
「当たり前じゃあ。女中いっても、わしらの家族だけん。」
この台詞を聞いた瞬間、画面の前で泣いてしまった視聴者は少なくないはずです。「女中」という立場を超えて、おくまちゃんを家族として認める司之介の言葉の温かさ。
フミも「ええ」と同意し、家全体の総意として響きます。おくまちゃんが泣きそうになりながら受け取るこの瞬間に、この朝ドラが大切にしてきた「人と人の心のつながり」が凝縮されていました。
焼き網の謎はまさかの「隙間」オチ!ネットに唸り声が上がった理由
さて、今週ずっと引っ張り続けた焼き網問題ですが、その答えはあっけなく、そしてコミカルに明かされます。
「隙間よ。この家、よく隙間に物が落ちるのよ。」
誰も知らないうちに、焼き網は釜の隙間に滑り落ちていた。泥棒も犯人も、最初からいなかったのです。「また隙間?」という反応に思わず笑ってしまいますが、この「隙間オチ」には深い意味があります。松野家は「おっちょこちょいが多い」と以前から描かれてきましたが、その日常のドジが疑心暗鬼を生み、人間関係を揺るがせていた。SNSでは「秀逸」「見事な雨降って地固まる」と唸る声が続出しており、シンプルな解決策が逆に脚本の巧みさを際立たせました。
「日本人の嘘、心あります」──ヘブン先生の執筆再開が示す物語の転換点
ヘブンが書斎で徹夜で書き続けます。翌朝食の場ではシャラップ!考え、消えて、なくなる。どうしてくれる」と叫ぶ元気なヘブン先生の姿が戻ってきました。
スランプに陥り筆が止まっていたヘブン先生が、日本人の「優しい嘘」と「心の器の大きさ」を目の当たりにして創作意欲を取り戻した。これは単なる一エピソードの解決に留まらず、物語全体の転換点として機能しています。
熊本では「何もない」と感じていたヘブン先生が、実は日本人の内面に深いものを見出した。怪談や化け物という形で語られてきた「日本人の心」が、嘘や隙間や笑いというごく日常的なかたちで改めて示された──そのことが、残り25話の物語の核になっていくことを予感させます。
次週予告の呪いと怪談モード復活──残り25話、物語はどこへ向かうのか
100話の穏やかな幕引きに安堵しつつも、次週予告には「呪われる」という不穏な言葉が飛び出します。序盤の松江で端的にお化けという形で描かれていた「怪談」のテーマが、熊本に来てからは「人の内面」という形で語られるようになりました。
次回予告で吉野イセ(芋生悠)が「不幸せ、呪え。おトキちゃん、呪われます」と語りかけ、トキたちが「え、呪われる?」と驚く場面が描かれています。しかしイセはすぐに笑い飛ばし、「ううん、うふふふふ」と煙に巻く。この意味深な引きが、視聴者の考察欲を刺激します。
SNSでは「怪談モード復活では」「残り25話、終盤まったく想像できない」という声が上がっており、ヘブン先生の執筆再開と呪いの予兆が重なる第21週以降に期待が高まっています。全125話の構成から見て、今は最終コーナーに差し掛かったタイミング。怪談・歴史・家族の絆という三つのレイヤーがどう収束するのか、目が離せません。
まとめ──100話の節目に相応しい、温かく深い一話だった
第100話は、派手な事件もなく、涙の別れもありませんでした。しかし、それがこのドラマの真骨頂です。日常の中にある「人を思いやる気持ち」をすくい取り、笑いと涙で包んで届けてくれる。丈と正木の若い誠実さ、ヘブン先生の家族宣言、焼き網の隙間オチ──どれも100話という節目を飾るのにふさわしいエピソードでした。
6. まとめ:今回の見どころ・伏線を整理
- おくまちゃん女中辞職騒動:焼き網紛失が生んだ疑心暗鬼が、最終的に家族の絆を強化する「雨降って地固まる」展開に。
- 丈の懐中時計嘘作戦:おくまちゃんを守るための利他的な嘘が、ヘブン先生の執筆再開につながるという美しい因果。
- 正木のポケット財布:意外な「度忘れ」オチが、秀才キャラの人間らしさを際立たせ場を和ませた。
- 「女中いっても、わしらの家族だけん」:ヘブン先生のこの一言がこの回の名台詞。外国人目線だからこそ言えるストレートな愛情表現。
- 焼き網は釜の隙間:事件の解決はシンプルで拍子抜けするほどだが、それが逆に「日常の落とし穴」というテーマと深く呼応。
- 次週「呪い」予告:吉野イセの笑いで締めくくられた今回の結末が、次週の怪談モード復活への橋渡しになっている伏線として機能。
ドラマ基本情報
- 番組名:NHK連続テレビ小説「ばけばけ」
- 放送:毎週月〜土曜日 午前8:00〜8:15(NHK総合)
- 公式サイト:https://www.nhk.or.jp/bakebake/
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