まさか、こんな形で「10年後」が来るとは思っていませんでした。第116話が始まった瞬間、画面はもう東京。神戸の風景は一切映らず、時間は一気に10年分流れていました。舞台は大久保、家族は増え、子供たちの笑い声が響く朝の食卓。どこからどう見ても幸せそうなその光景の中に、ヘブン先生はひっそりと「命少ない」という言葉を落としていきました。笑いと切なさが同居する、ばけばけらしい一話でした。
「ばけばけ」第24週第116話 あらすじ
神戸から10年が過ぎ、トキとヘブン先生は東京・大久保で暮らしている。長男・勘太、次男・勲、そしてトキの両親・司之介とフミも同居し、にぎやかな大家族の毎朝が描かれる。ヘブン先生は帝国大学の英語教師として6年半が経ち、月給400円という破格の待遇を誇りながらも、人力車から途中下車して歩くほど健康を気にかけている。食卓では砂糖と塩を間違えるコミカルなシーンも挟まれる一方、英語でイライザに「健康が衰えている」「次の本が最後の一冊になるかもしれない」と語る場面では、静かな覚悟が滲み出た。そして床の間には、ラストサムライさながらの勘右衛門の遺影。
「命少ない」── ヘブン先生の静かな覚悟が胸に刺さる
53歳の告白と「最後の一冊」への誓い
第116話で最も心に残ったのは、ヘブン先生が英語でイライザに語りかけた言葉です。
“As I told you not so long ago I fear my health is in decline. My own father was around my age when he passed away. Eliza I swear my next book will be a best seller. Although it may be the last book I ever write. I want it to be worthy. Something I’ll not regret.”
「健康が衰えていると感じている。自分の父も私と同じくらいの歳で亡くなった。次の本は必ずベストセラーにする。でも、それが最後の一冊になるかもしれない。後悔のない、価値あるものにしたい」── 日本語のセリフに挟まれたこの英語の独白は、静かすぎるがゆえに胸に刺さりました。
家族のいないところで、ヘブン先生が自分の「終わり」を意識しているという事実。しかも、それを妻のトキにではなく、旧知の記者・イライザに語りかけているところに、ヘブン先生という人物の孤独と誠実さが凝縮されています。トキには心配をかけたくない。でも、内心では覚悟が固まっている。その対比が、後半の「桃源郷」発言をより切ないものにしているのです。
SNSでも「ヘブン先生、体調悪そう…ねぇ…」「胸が痛む」という声が多く見られ、この場面が視聴者の感情を大きく揺さぶったことは明らかです。
「健康大事。足腰大事。歩きたい。五十三歳。命少ない」── 人力車から降りるヘブン先生
帝大へ向かうためにクマちゃんの引く人力車に乗り込んだヘブン先生でしたが、途中でこう言います。
「止めてくだされ。ここ降ります。」
車夫が「今日もですか?」と尋ねると、
「うん。健康大事。足腰大事。歩きたい。五十三歳。命少ない。」
するりと告げてしまうこの台詞の軽さが、むしろ怖い。53歳、史実でも小泉八雲は54歳で亡くなっています。「命少ない」という言葉を笑い飛ばすように言いながら、颯爽と歩き出すヘブン先生の背中には、どこか悲壮感のようなものが漂っていました。
車夫が「いやいや、命はまだまだおありでしょうが」と返すやり取りはコミカルですが、ドラマとして見ればここはしっかり「フラグ」です。この帰り道、ヘブン先生が帝大ではなく別の場所へ「寄り道」していたことをトキが知るくだりも、「たまの息抜きよ」とトキが笑い飛ばす一方で、何かが確実に変わりつつある予感を残していきました。
ラストサムライな勘右衛門の遺影 ── 笑いと喪失が交差する10年後
遺影の小道具が語る時間の重さ
「おじじ様」として長らく物語を支えてきた松野勘右衛門(小日向文世)が、第116話では「遺影」として登場します。朝食のシーンで床の間に飾られたその写真は、斜に構えた立ち姿で、視聴者からは「ラストサムライ風すぎてカッコよすぎ」「いつ撮ったん」という声が相次ぎました。
実際、最初に画面に映ったとき、「おじじ様=司之介かと思った」という反応も多く、この遺影のカットは視聴者を一瞬ミスリードする演出として機能しています。祖父・勘右衛門が旅立ち、今は司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)が東京に同居している──その「世代交代」を遺影一枚で静かに伝える脚本の巧みさには、唸らされました。
また、朝食の席には「おじじ様、おはようございます」と元気に挨拶する孫たちの声も響きます。10年という時間の中で、失ったものと守り続けてきたものが、この一シーンに凝縮されているように感じます。笑えて、切なくて、じんわりする── ばけばけが最も得意とする感情の重ね方です。
「桃源郷」を繰り返す夫婦の言葉の深さ
地獄から楽園へ── ヘブン先生のセリフの逆転劇
第116話で最も印象的な言葉の一つが「桃源郷」です。
もともとヘブン先生は「東京は地獄だ」と言っていたのに、今やこうつぶやきます。
「なんだか桃源郷のようじゃのう。」
トキが「何がです」と返せば、
「ヘブンは東京は地獄じゃ言っちょったが、東京こそ桃源郷じゃないか。」
その後、トキとヘブン先生は「桃源郷」という言葉を繰り返し、まるでその言葉に幸せを刻み込もうとするかのように何度も言い合います。
「桃源郷だね。」
「それじゃろ。」
「桃源郷ですね。」
「はい。桃源郷。」
「桃源郷。」
この繰り返しは、単なる夫婦の日常会話ではないと思います。「命少ない」と自覚しているヘブン先生が、今この幸せを言葉として刻もうとしている── そう読むと、「桃源郷」の連呼はまるで詩のような切なさを帯びてくるのです。
「桃源郷だと笑う家族に、テレビのこちら側は胸が痛む」という声がSNSに上がったのも、決して大げさではありません。幸せとは、失いかけているときに初めてその輪郭が見える、ということをこのシーンは静かに教えてくれています。
ばけばけ400円と帝大生活の実像
「帝大の中にでも家建てたらどけじゃ」── ユーモアの中に見える史実
東京・大久保から帝大まで、ヘブン先生は毎日人力車で通っています。急ぎながら出かけるヘブン先生に司之介が、言うのが、
「400円ももらっちょるんだけん。帝大の中にでも家建てたらどけじゃ。」
「ばけばけ400円」という検索が急上昇したのも納得の一言です。月給400円という金額は当時としては破格中の破格。明治の中学教師の数倍にも相当する高給で、史実の小泉八雲こと小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が東京帝国大学英文学講師として受け取っていた給与とも合致します。
ただ、同居家族はトキ・2人の子供・トキの両親と大所帯。「家計を支えながら400円をどう管理していたか」という視点で見ると、ヘブン先生の「パパとしての重圧」が透けて見えてきます。SNSで「焦りや気苦労が絶えないパパさんに」「かつての自由な彼はどこへ」と共感を集めたのは、この大黒柱としてのヘブン先生の姿があったからこそです。
また、食卓での英語教育シーンも印象的でした。子供たちに英語の発音を繰り返させながら、
「帝国大学英文科教師、うしみずやくも先生に朝から付きっきりで教えてもらえることなんてないんだけんね。」
とトキが子供たちを励ます場面は、「八雲 ばけばけ」として史実の名前が劇中に自然に溶け込んだ瞬間でもありました。子供への英語教育も、実際の小泉八雲が長男を小学校に入れず自宅教育した史実を反映したもの。ドラマと歴史がここでもしっかりとつながっています。
ブードゥー人形消失と「不吉」の伏線 ── 演出が仕込む複数のシグナル
第116話では、さりげなく散りばめられた「不吉のサイン」が気になりました。
まず冒頭、ヘブン先生が自分のブードゥー人形を探し回るシーンがあります。
「ああ、マイブードゥードール。」
トキが「ブードゥードール?あれをなくすいうのはなんというか、不吉ですね」と言えば、ヘブン先生は「不吉ことない」と笑い飛ばす。でも、結局この回を通じて人形は見つからず、ラストでもトキが「早く見つかるといいですね」と言うだけで終わります。
この「失われたお守り」の不回収は、偶然ではないはずです。
さらに、朝食で砂糖と塩を間違えるシーン、人力車から降りて「命少ない」と言うシーン、そしてイライザへの英語の独白。演出としてはコミカルな笑いと深刻な伏線が巧みに組み合わさっており、「脚本家フラグ」として読み解ける構造になっています。
「ブードゥー人形消失」「コーヒーに塩」「人力車から歩く」「53歳・命少ない」「最後の一冊」── これだけのシグナルが一話に詰め込まれているとなれば、ヘブン先生の終焉が近づいていることは、もはや疑いようがありません。残り2週間という放送期間も含め、今後の展開から目が離せません。
今回の見どころ・伏線まとめ
- 「命少ない」「最後の一冊かもしれない」── ヘブン先生が静かに自らの終わりを覚悟し始めている。史実では54歳で亡くなる小泉八雲と完全に重なる描写
- 勘右衛門の遺影がラストサムライ風── 10年の喪失を遺影一枚で語る演出の巧みさ。笑えるのに切ない、ばけばけの真骨頂
- 「桃源郷」の連呼── 幸せを言葉に刻もうとするヘブン先生の深読みができる夫婦のやり取り
- ヴードゥー人形が最後まで見つからない── 「不吉」とトキ自身が言ったお守りの消失は、今後への明確な伏線
- ばけばけ400円と「帝大の中に家建てろ」発言── 史実の高給ぶりを自虐ユーモアで表現しながら、大家族を支えるヘブン先生の重圧が透ける
- 銀二郎(寛一郎)の再登場、牡丹燈籠の回収、夏目漱石との関係── 残り2週間で描かれるかどうか、視聴者の注目が集まっている未回収の伏線群
NHK連続テレビ小説「ばけばけ」第24週・第116話(2026年3月16日放送) 視聴はNHK+でも配信中です。
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