2025年9月29日、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」がついにスタートしました。主演・高石あかり演じる没落士族の娘・トキと、外国人の夫・ヘブン(トミー・バストウ)が織りなす、怪談と日常の物語。初回から視聴者のSNSは「OP号泣」「丑の刻参り爆笑」と大盛り上がりです。ハンバートハンバートが手掛ける主題歌の静止画オープニング、阿佐ヶ谷姉妹が声を担当するヘビとカエルのメタナレーション、そして明治維新に翻弄される家族のドタバタ劇。笑いと涙が交錯する第1話を、セリフと演出の意図とともに徹底解説します。
ばけばけ第1週第1話 あらすじ
明治8年、松江。武士の世が終わり、没落した士族の家に生まれた少女・トキ(幼少期:福地美晴)は、父・司之介(岡部たかし)、母・フミ(池脇千鶴)、祖父・勘右衛門(小日向文世)と貧しい暮らしを送っていました。新政府への恨みから、司之介は家族総出で丑の刻参りを決行します。一方、物語は現代(明治中期)のトキ(高石あかり)と夫・ヘブンのシーンから始まり、ろうそくの灯りの中でトキが怪談を語ります。学校ではトキが同級生にバカにされ、先生からは「呪う暇があったら働け」と父を侮辱される日々。それでもフミは「父上は悪くない」とトキを抱きしめます。貧しくとも温かい家族の絆が、明治の混沌を生き抜く力となっていくのです。
第1話のストーリーの流れ|怪談を愛する夫婦と、呪いで始まる明治の家族物語
現代パート|トキとヘブンの怪談ナイト、ヘビとカエルのメタ発言炸裂
物語は、ろうそくの灯りの中でトキ(高石あかり)が夫・ヘブン(トミー・バストウ)に怪談を語るシーンから始まります。トキが語るのは「耳なし芳一」を思わせる怖い話。提灯の光が血を照らし出すと、ヘブンは「素晴らしい!」と感嘆の声を上げます。
ヘブン「たちまち、意味わかりますか?」
トキ「たちまちは、インスタントリー。あっという間にの意味です」
片言の日本語で質問するヘブンと、辞書を捲りながら優しく教えるトキ。このやり取りが、二人の関係性の温かさを物語っています。ヘブンはトキの表情を気にかけ、
「どうしましたの顔ですか?」
と尋ねますが、トキは笑顔で
「もっと話があれば」
と前向きに応えます。
ヘブン「幽霊の話、お化けの話、みんな馬鹿らしい。笑うでしょ。世界で一番のママ」
ヘブンの「世界で一番のママ」という言葉に、トキはほっこり。そしてヘブンがトキのおでこにキスをする瞬間、視聴者の心も温かくなります。
このシーンを見守るのが、庭にいるヘビとカエル(声:阿佐ヶ谷姉妹)。
「あらやだ、ちょっと朝よ。夜だけど夜だけど朝なのよ」
とメタ的にツッコむ掛け合いが、朝ドラらしからぬユーモアを生み出しています。SNSでは「ヘビとカエルが可愛い」「阿佐ヶ谷姉妹の声で朝から癒される」と好評でした。
このナレーションは、怪談を愛する物語のトーンを象徴する演出です。怖さと笑い、日常と非日常が混在する「ばけばけ」の世界観を、冒頭から巧みに表現しています。
回想パート|明治8年、家族総出の丑の刻参り「ミシシッピ!」
トキの回想が始まります。
「それは、明治の初め、武士の世が終わったばかりの、それは、それは恨めしい時代のことでございます」
というナレーションとともに、舞台は明治8年の松江へ。
夜、父・司之介(岡部たかし)が頭にろうそくを掲げ、藁人形に釘を打ち込んでいます。妻のフミ(池脇千鶴)、祖父の勘右衛門(小日向文世)、そして幼いトキ(福地美晴)も同席。家族総出の丑の刻参りです。
司之介「これで何かが変わるかもしれません。わしは今、我が家の敵という敵を呪い殺すべく、武士の世を終わらせた長州・薩摩、新政府かり、明治の世になり、調子に乗っちゃ切りの商人しかり、夜が明けた途端、バタバタと倒れていくかもしれません」
司之介の長台詞は、武士としてのプライドと、時代に取り残された無力感が入り混じっています。そして極め付けが、勘右衛門の一言。
勘右衛門「では、ペリーも。ペリーも呪っておくれ!」
司之介「ミシシッピ!サスケハナ!黒船が!」
もはや誰を呪っていいのかわからなくなって、黒船の名前を叫ぶこの滑稽さが、SNSで大きな話題となりました。「真面目なのにマヌケでおもしろかった」「第一話から爆笑した朝ドラは初めて」という声が続出。明治維新という歴史的転換期の喪失感を、笑いに昇華した脚本の妙です。
一方で、この儀式を物陰から見ている男の子の姿も描かれます。「知られたら意味ないが」というツッコミ通り、丑の刻参りの非効率さが浮き彫りになる演出です。
翌朝、トキは寝坊してごはんを食べながら学校へ急ぎます。司之介が追いかけてきますが、すでに「ざんぎり頭」にしていても、周囲からは「呪いの家」として敬遠される日々。時代は変わっても、家族の居場所はまだ見つかっていません。
視聴者が号泣したオープニングの魅力|静止画×ハンバートハンバートの新感覚
「日に日に世界が悪くなる」歌詞が刺さる理由
「ばけばけ」のオープニングは、放送直後からSNSで「過去一よくね????」「号泣する未来が見える」と絶賛の嵐でした。主題歌はハンバートハンバートの「笑ったり転んだり」。ゆったりとしたメロディに乗せて、トキとヘブンの日常を切り取った静止画が流れます。
「日に日に世界が悪くなる」
「野垂れ死ぬかも知れないね」
この歌詞が、明治という混沌の時代と、家族の苦境をリアルに表現しています。視聴者からは「心ぎゅっと掴まれちょっと泣きそう」「初回から涙腺ヤバい」という感想が寄せられました。
物語はこれから、トキとヘブンがどのように困難を乗り越えていくのかを描きます。しかし冒頭で「世界が悪くなる」と歌うことで、視聴者は彼らの未来に不安と期待を同時に抱くのです。朝ドラらしい温かさと、現実の厳しさのバランスが絶妙で、続きが気になる仕掛けになっています。
また、「笑ったり転んだり」というタイトルも象徴的です。第1話では、丑の刻参りで笑い、いじめられて転び、それでも家族で笑顔になる。このサイクルが、物語全体のテーマを予感させます。
横スライドクレジットの演出が「新鮮」と話題
オープニング映像は、従来の朝ドラとは一線を画す静止画形式。トキとヘブンの何気ない日常を切り取った写真が、次々と映し出されます。そして特徴的なのが、クレジットが横にスライドする演出です。
「OPがゆったりとしていて、落ち着く感じで心地よい‼︎ 写真の形式なのが新しい! クレジットが横に出るのも新鮮!」(SNSより引用)
この横スライドは、時代に取り残される家族の「横並び感」を象徴しているとも解釈できます。明治維新で世の中が前進する中、武士の家族は横に流されていく。その停滞感と、それでも日常を大切にする姿勢が、静止画と横スライドで表現されているのです。
また、静止画という選択も秀逸です。動きのない写真が、逆に視聴者の想像力をかき立てます。「この二人はどんな会話をしているのだろう」「この笑顔の裏には何があるのだろう」と、物語への期待が高まるのです。
「このOPだけでばけばけ好き! 主題歌がときとヘブンが歌ってる感じもしてとってもいい。これから毎朝楽しみ~~」(SNSより引用)
視聴者の多くが、OPだけで物語に引き込まれたと語っています。朝ドラの顔とも言えるオープニングで、「ばけばけ」は大成功を収めたと言えるでしょう。
丑の刻参りシーンで爆笑!無力感をコミカルに描く脚本の妙
黒船の名前を叫ぶ司之介、真面目なのに滑稽な理由
丑の刻参りのシーンは、第1話の中で最も笑いを誘った場面です。司之介が藁人形に釘を打ち込みながら、次々と敵を列挙していきます。
司之介「武士の世を終わらせた長州・薩摩、新政府かり、明治の世になり、調子に乗っちゃ切りの商人しかり」
ここまでは、没落士族の恨みとして理解できます。しかし、勘右衛門が「ペリーも呪ってくれ」と言い出すと、話は飛躍します。
司之介「ミシシッピ!サスケハナ!黒船が!」
ペリーが来航したのは明治維新の遠因ですが、すでに20年以上前の出来事。しかも司之介は黒船の名前を叫び始めます。この「もはや誰を呪っていいのかわからなくなった感」が、視聴者の笑いを誘いました。
この滑稽さの裏には、深い悲しみがあります。司之介は本気で家族を幸せにしたいと願っています。だからこそ、藁人形に釘を打つという無意味な儀式にすがるしかない。その無力感が、コミカルな演出によって浮き彫りになるのです。
笑いと哀愁のバランスが絶妙で、視聴者は司之介を笑いながらも、同時に応援したくなります。これが「ばけばけ」の脚本の巧みさです。
「呪う暇があったら働け」先生のツッコミと時代のギャップ
学校のシーンでは、トキが同級生にいじめられます。
同級生「トキの父上、今日もざんぎり頭をかっこしておりましたけど、変わらんですが」
トキ「父には父の考えがあって働いちょらんのだけ」
同級生「それはどげな考えじゃ。言うてみろ」
トキは応えられません。なぜなら、父の「考え」とは、呪いをかけることだからです。そこへ先生が登場します。
先生「呪う暇があったら、働けっちゅうのはその通り。ここにおる皆、親御様はもともとお武家だが、商いを始めたり、役人になったりと、新しい仕事を始めておられるに、ならにゃ野たれ、死ぬ時代になったけん、いつまでも武士を引きずっちょるわけにはいけんのだ」
先生の言葉は正論です。しかし、司之介にとって、武士であることは誇りそのもの。簡単には捨てられません。この時代のギャップが、家族の苦しみを生み出しています。
視聴者の多くが、司之介の立場に共感しています。時代の変化に取り残される苦しみは、現代にも通じるテーマです。「ばけばけ」は、明治という時代を通して、普遍的な人間ドラマを描いているのです。
トキは先生の言葉を家で司之介に伝えます。すると司之介は激昂し、勘右衛門から刀を受け取って家を飛び出します。フミとトキが追いかけると、橋の上で立ち尽くす司之介の姿が。
このシーンでは、司之介の葛藤が無言で表現されます。刀を持って家を出たものの、何もできない。明治という時代が、武士としての彼の存在意義を奪い去ったのです。
家族の絆を描くセリフと演出|「父上は悪くない」に込められた想い
フミの抱擁シーンが泣ける、池脇千鶴の母性演技
橋のシーンで、フミはトキを止めます。そして、今の家族の状況を優しく説明します。
トキ「父上は悪くないんだよね?」
フミ「悪くない」
フミはトキを抱きしめます。このシーンに、多くの視聴者が涙しました。
フミの「悪くない」という言葉には、深い意味があります。司之介は確かに働いていません。しかし、それは彼が怠け者だからではなく、時代に翻弄されているからです。フミはそれを理解し、夫を責めることなく、娘を守ろうとしています。
池脇千鶴の演技は、台詞以上の感情を表現しています。抱擁の温かさ、目線の優しさ、声のトーン。すべてが、母としての愛情を物語っています。
このシーンがあるからこそ、視聴者は松野家を応援したくなるのです。貧しくとも、家族の絆があれば乗り越えられる。そんなメッセージが込められています。
化け物の絵を描くトキ、笑顔でふざける家族の温かさ
翌朝、トキは絵を描いています。その絵には、化け物になった父が先生を食べている様子が描かれています。
フミ「父上が化け物になって、先生を食べちょるが」
司之介「昨日の仇討ちじゃな」
トキ「うん!」
司之介「次は女子を食うてやるぅ~」
この会話が、家族の関係性を象徴しています。トキの絵は、父への不満ではなく、ユーモアなのです。そして司之介も、それを理解して一緒に笑います。
貧しい生活の中でも、家族はふざけ合い、笑い合う時間を大切にしています。この温かさが、「ばけばけ」の魅力です。
最後に、勘右衛門が司之介の頭を刀で軽く突くシーン。これは、「いつまでも立ち止まっているな」という叱咤でもあり、「でも家族だから許す」という愛情でもあります。
第1話は、こうして家族の笑顔で締めくくられます。明治の混沌、いじめ、貧困。様々な困難がありながらも、家族の絆があれば乗り越えられる。そんな希望を感じさせるエンディングです。
まとめ|第1話の見どころと今後の展開予想
「ばけばけ」第1話は、笑いと涙が交錯する素晴らしいスタートを切りました。以下、今回の見どころをまとめます。
- ハンバートハンバートのOP:静止画と「日に日に世界が悪くなる」の歌詞が、視聴者の涙腺を刺激。横スライドクレジットの新鮮さも話題
- 阿佐ヶ谷姉妹のヘビ&カエル:「朝なのに!夜だけど!」のメタナレーションが、朝ドラに新しい笑いをもたらす
- 丑の刻参りの爆笑シーン:「ミシシッピ!サスケハナ!」と叫ぶ司之介の滑稽さと哀愁が絶妙
- 家族の絆:フミの「悪くない」という抱擁、化け物の絵でふざける家族の温かさが心に残る
- 時代のリアル:明治維新で取り残された武士の苦しみを、コミカルかつ真摯に描く脚本の巧みさ
- トキとヘブンの関係性:現代パートで描かれる二人の温かなやり取りが、今後の物語への期待を高める
今後の展開としては、司之介が新しい仕事を見つけられるのか、トキがどのようにヘブンと出会うのか、そして怪談がどのように物語に絡んでくるのかが注目ポイントです。
「野垂れ死ぬかも知れないね」という歌詞が示す通り、この家族の未来は決して明るくないかもしれません。しかし、笑顔と絆があれば、きっと乗り越えられる。そんな希望を抱かせる第1話でした。
明日からも、松野家の物語を見守っていきましょう!