12月2日放送の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第9話は、勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)が最悪の1日を迎える衝撃的な展開でした。店舗出店詐欺に遭う鮎美、「おにぎりハラスメント」で出勤停止になる勝男。自販機に挟まるという屈辱的なシーンから始まった2人の再会は、ホルモン焼き屋での語らいを経て、最後には勝男の「もう一回やり直そう」という告白へ。全力不器用男の成長が詰まった神回を徹底解説します。
「じゃあ、あんたが作ってみろよ」第9話 あらすじ
メキシカンフェスで活躍する鮎美を見て、勝男は自分が鮎美を縛りつけていたことを謝罪。一方、鮎美は有名フードプロデューサー・長谷川から店舗出店の誘いを受け、会社を辞める決意をする。勝男もプロジェクトリーダーに抜擢されるが、部下の柳沢との価値観の違いで衝突。善意で渡したおにぎりが「おにぎりハラスメント」としてハラスメント報告され、出勤停止に。さらに鮎美は店舗契約が詐欺だと判明し、百五万円を失う。自販機に挟まり最悪の状態だった勝男を偶然助けた鮎美。2人はホルモン焼き屋で語らい、勝男は「もう一回やり直そう」と告白する。
メキシカンフェスで輝く鮎美と変わった勝男
第9話は、太平(楽駆)のバー「オンボロ」で開催されたメキシカンフェスのシーンから始まります。ソンブレロを被った鮎美がメキシカン春巻きを客に振る舞う姿は、以前の彼女からは想像できないほど生き生きとしていました。
カウンターから鮎美を見つめる勝男の表情には、複雑な感情が浮かんでいます。手伝おうとする勝男に対し、鮎美は優しく言います。
「カツオさんはお客さんなんだから、楽しんでもらいたいの」
この一言に、もう昔のような関係ではないことが滲み出ています。ミナト(青木柚)に背中を押された勝男は、フロアで独特のステップで踊り始めます。その姿を見た鮎美となぎさ(サーヤ)は思わず笑ってしまいます。
なぎさ「すごいステップだな」
コメディ要素満載のダンスシーンでしたが、これが勝男の変化の表れでもありました。以前の完璧主義だった彼なら、絶対にやらなかったであろう行動です。
「今まで…鮎美の事、縛り付けてきてたんだなぁって」勝男の心からの謝罪
フェス後、店を出た2人。勝男は鮎美に向かって心からの言葉を伝えます。
「あゆみすごいな。だってあんな空間作って。俺正直、あゆみがあんな風にできるなんて思ってなかったからさ」
そして続けて、勝男は自分の非を認めます。
「俺さ。今まで…あゆみのこと縛りつけてきてたんだなって。本当にごめん」
頭を下げる勝男。この姿に、鮎美も複雑な表情を浮かべます。
「いや、私もあの頃はカツオさんについていくことしか考えてなかったから」
見つめ合う2人の間を、ラブラブなカップルが通り過ぎていきます。
「好き!」
「もうこんなとこで恥ずかしい。」
「だって我慢できなくて」
このカップルの存在が、2人の現状を際立たせる演出になっています。かつては自分たちもこうだったのに、今は違う。そんな複雑な感情が画面から伝わってきました。
店に戻った鮎美に、なぎさが鋭く尋ねます。
「もしかしてカツオにやり直そうって言われた?」
鮎美の目が泳ぎます。でも、言われたのは謝罪だけ。
「なんか変な感じなんだよね。カツオさんってさ、あんな風に自分の間違いを認めて謝るような人じゃなかったから」
なぎさの言葉がシンプルで的を射ています。
「振られて反省したんじゃん?」
でも鮎美は答えられません。カツオとやり直したいのか、自分でもわからない。そんな揺れる心が表情に出ていました。
この時点で、勝男は確実に成長しています。完璧主義で自分の非を認めなかった男が、きちんと謝罪できるようになった。でもそれが鮎美の心を揺さぶっているのも事実。変わった勝男に対して、鮎美はどう向き合えばいいのか迷っているのです。
夢への第一歩?長谷川からの誘いと店舗出店の決意
閉店後の店内で、鮎美たちが片付けをしていると、店の奥から女性が現れます。彼女はメキシカン春巻きを手に持ち、興奮気味に言います。
「この春巻き、すっごくおいしいわ」
名刺を差し出す女性。フードプロデューサーの長谷川(しゅはまはるみ)でした。彼女はタブレットを見せながら、自分が手がけてきた有名店を紹介します。
「わたくしのフレンチ、突然ステーキ、飲むモンブラン」
どれも実在する有名店です。長谷川の言葉は、鮎美の心を掴んでいきます。
「どんなに美味しい料理でも、知られなければ埋もれてしまう。私は本当にいいと感じたものは世に出していきたいの。鮎美さん、一緒にお店を出しましょう」
驚く鮎美に、長谷川は続けます。
「あなたじゃなきゃダメなの。これまで家庭料理は女性が支えてきたでしょう。料理人ももっと女性が活躍すべきだと思う。時代は変わる。あなたとなら変えられる」
「頭じゃなくて心が知ってるはず」言葉に背中を押される鮎美
少し考えたいという鮎美に、長谷川は印象的な言葉を残します。
「でも、考えるんじゃなくて、感じて。あなたが本当にやりたいことは、頭じゃなくて心が知ってるはず」
この言葉が、鮎美の心を大きく動かします。自宅で一人、夕食を食べながら長谷川の言葉を思い出す鮎美。棚に置かれた黒髪のウィッグ(以前、偽の自分を演じていた象徴)を見つめ、考え込みます。
そして決意を固めた鮎美は、オンボロでなぎさと太平に報告します。
「仕事…辞めることにした。この前の人にね、お店出さないかって誘われたの」
なぎさの反応は最高です。
「うれしすぎ。アユメロの料理、好きなとき食べ行けるとか最高じゃん」
不安を口にする鮎美に、太平は力強く言います。
「安定が我慢になるなら捨てていいと思うけど」
この言葉に、視聴者も多くが共感したのではないでしょうか。安定した会社員生活と、不安定だけど夢のある独立。鮎美の決断は、多くの人が一度は考えたことがある選択肢です。
職場のロッカールームでは、同僚たちが花束を持って鮎美を祝福します。
「私、いつも山岸さんのお弁当見て思ってたんです。これをデパ地下で販売したら初詣の明治神宮ぐらい並ぶって」
同僚の佐々木の大げさな表現に、鮎美も笑顔になります。そして長谷川と一緒に店舗の内見へ。空っぽのキッチンを見て、目を輝かせる鮎美。
「すごく素敵です。このぐらいの広さ、ちょうどいいです」
長谷川も嬉しそうに提案します。
「じゃあここに決めちゃおうか」
帰宅後、鮎美は契約費用明細を見つめます。契約金合計は百五万円。スマホで残高を確認すると百二十万円。迷いながらも、決意を込めて振込ボタンを押します。
手で顔を覆う鮎美。高まる気持ちを抑えきれない様子です。そしてエプロンの紐を結び、笑顔で料理の試作に取り組み始めます。
「よし」
この時点では、誰もが鮎美の夢の実現を応援していました。まさかこの後、衝撃的な展開が待っているとは…。
プロジェクトリーダー抜擢と柳沢との価値観の衝突
一方、勝男の職場では、高田課長(平原テツ)から嬉しい知らせが届きます。
「このエコサイクルトイレの企画、共同開発のプレゼンに進めることになった。で、そのプロジェクトのリーダーに海老原くんが抜擢されました」
拍手する同僚たち。白崎(前原瑞樹)と南川(杏花)も笑顔で祝福します。
高田「最近後輩の面倒見もいいし、頑張ってるって、上も期待してるみたいよ」
勝男も嬉しそうに答えます。
「いやー、ありがとうございます」
そして、タッグを組むことになる事業戦略部の柳沢(濱尾ノリタカ)が紹介されます。
「柳沢です。今回の件、しっかり形にしていきましょう」
この時点では、何の問題もないように見えました。しかし、勝男と柳沢の仕事のスタンスは根本的に違っていたのです。
「人の苦労とか気持ちなんて想像してない」価値観のズレが生む対立
後日、勝男は柳沢のデスクに資料を置き、指摘します。
「提出してくれた各店舗分のアンケート、えーここ、数字だけ記入されてて、ユーザーの声、こっそり抜けちゃってんだよね」
柳沢の返答は軽いものでした。
「それ、店舗に電話してみたんですけど、繋がらなかったんですよ」
勝男は真面目に提案します。
「あ、じゃあちょっと急ぎだから、直接行ってもらっても」
ここで柳沢の顔色が変わります。
「現場まで行くんですか?数字があれば十分だと思いますけど」
勝男の考えは違いました。
「あ、いやいや、数字だけじゃダメだな。だってさ、今回の要は市場の声なんだから。答えてくれた人たちの思いは無駄にしたくないな」
このやり取りを見ていると、どちらの言い分も理解できます。勝男は真摯に仕事に向き合いたい。柳沢は効率を重視したい。ただ、柳沢はスマホを操作しながら返事をしているなど、態度に問題があったのも事実です。
資料を置いて去る勝男。柳沢は椅子にもたれ、ハンカチで靴を磨きながらつぶやきます。
「最悪。せっかく早く帰れそうだったのに」
隣の席の友田も同調します。
柳沢「海老原さんみたいに仕事が人生の人はそれでいいんだろうけど、こっちにまで押しつけてくんなよな」
友田「わかるわー」
この会話が、現代の職場における価値観の違いを如実に表しています。勝男のような「仕事に全力」タイプと、柳沢のような「ワークライフバランス重視」タイプ。どちらが正しいというわけではありませんが、この2つの価値観が衝突すると、深刻な問題を生み出すことになります。
後日、勝男が柳沢のパソコンを確認すると、アンケートのデータが不完全なままでした。
「これ、アンケート百人分までしかないけど」
柳沢の言い訳に、勝男は詰め寄ります。
「いやいや、だったら直接現場に行って確認しないと」
ここで柳沢が爆発します。
「今時そんなやり方しませんよ。そんなことしてたらどんなに時間があったって足りません」
「じゃあ、海老原さんは俺がどれだけ時間かけて、どんな思いでこの資料を作ったのか、一度でも考えました?」
勝男は必死に説明しようとします。
「考えてるよ。それも含めた上で、より良いものにするために」
しかし柳沢の答えは冷たいものでした。
「それです。そうやってより良いものにとか言って、結局人の苦労とか気持ちなんて想像してないんですよ」
「言ったって無駄です。海老原さんにはわからないし、もうわかってもらおうとも思っていません」
周りの社員たちが注目する中、柳沢はパソコンを閉じて帰っていきます。
「定時なんで。お疲れ様でした」
残された勝男は、やりきれない表情になります。善意で、より良い仕事をしようとしただけなのに、なぜこんなことになってしまったのか。
善意が裏目に…「おにぎりハラスメント」で出勤停止
休憩室で自動販売機からコーヒーを買おうとする勝男。しかし缶が出てきません。受け取り口の板を動かしていると、高田課長が現れます。
「はい、海老原くん。コツがあんのよ」
自販機を叩いて缶を取り出す高田。そして勝男に言葉をかけます。
「コミュニケーション不足だね。実際、その人の立場にならないとわからないことっていっぱいあるよ。でも、全部の立場になるなんて不可能だろう。だからこそ話し合う。それがコミュニケーションだよ」
そして提案します。
「まずは自分から飲みにでも誘ってみたら」
小さくうなずく勝男。課長の言葉を素直に受け取ります。
一方、勝男の家では、椿と南川を招いて手巻き寿司パーティーが開かれます。椿が最近失恋したばかりということで、慰め合いの会です。
そこで南川が失恋エピソードを語ります。
「マッチングアプリで出会った人なんですけどね。向こうが仕事の相談してきたんで、自分の意見言ったら、そういうアドバイス求めてないとか言われて。男っていうのは、女が思ってる以上に仕事のプレッシャーかかってんのとか言われたんですよ」
気まずそうな表情のカツオ。椿が鋭くツッコミます。
「どういう顔?」
勝男の答えが正直です。
「いやなんか、男の愚痴って、自分のことを言われてるみたいになっちゃってさ」
椿の言葉がストレートです。
「関係ないでしょ。カツオは男代表じゃないんだからさ」
このやり取りの中で、勝男が手巻き寿司の巻き方について指摘するシーンがあります。
「さっきからずーっと巻き方を間違えてます」
椿が反論します。
「いや、間違いとかないです」
「こうやってちゃんと端にきれいに置いた方が-」
南川が鋭く突っ込みます。
「そんな文句言っていいんだ。この前彼女のフリしてあげた人に」
椿も負けていません。
「でもそれはそれ、これはこれ、ちゃんと綺麗に巻いた方が美味しい」 「うるさい自由に食べさせてよ」
この細かい指摘癖が、後の「おにぎりハラスメント」に繋がっていくのです。
翌朝、勝男はおにぎりを握ります。課長の助言に従って、コミュニケーションを取ろうとしたのでしょう。職場で柳沢にランチバッグからおにぎりを取り出します。
「これ、よかったら」
柳沢は驚きます。
「え、これ、手作りですか?」
勝男は照れくさそうに答えます。
「うん、俺が握った。ま、美味しいかわかんないけど、よかった」
頭を下げて去っていく勝男。柳沢は一瞬、笑顔を向けられて戸惑います。
この善意の行動が、まさかの結果を招くことになります。
「おにハラ」とは?現代社会の難しさを描いた問題提起
後日、勝男は高田課長に呼び出されます。
「パワハラ」
驚く勝男。
「え?誰が?」
高田が申し訳なさそうに説明します。
「海老原くんが」
ハラスメント報告書を見せられます。その内容は衝撃的でした。
「えー、先週、海老原くんが後輩の柳沢くんに対して嫌がっているにもかかわらず、無理やり飲みに誘う」
勝男は必死に否定します。
「飲みに行かない?」
「それ強制ですか?」
「いやいや無理やりじゃない」
そして次の項目。
「あと、おにはら。後輩の柳沢くんに手作りのおにぎりを無理やり食べさせた」
「いやいやいやいやいや、そんなことはしてないですよ」
高田も謝ります。
「すまん。そもそも俺が飲みにでも誘えばって言ったばっかりに」
しかし結論は変わりません。
「それで、海老原くんにはしばらくお休みしてもらうことになった」
出勤停止。愕然とする勝男。
高田の言葉が、現代社会の難しさを表しています。
「難しいよなぁ。いや、価値観ってさぁ、いつの間にか変わってるだろ。それについていくだけで必死でさ。もしその価値観がわからなくなったら、俺たちみたいな人間は切り捨てられるのかなって、ついそんなこと考えちゃうんだよな」
この「おにぎりハラスメント」、通称「おにハラ」は、SNSでも大きな話題になりました。視聴者の間でも意見が分かれ、「これはパワハラじゃない」という擁護派と、「部下が嫌がってるならハラスメント」という慎重派に分かれました。
実際、勝男の行動を見ると、無理やり食べさせたわけではありません。ただ、「よかったら」と渡しただけ。しかし、上司という立場から渡されたおにぎりを、部下が断れるかどうか。そこに権力関係が生まれているのでは、という指摘もあります。
このエピソードは、現代の職場コミュニケーションの難しさを浮き彫りにしました。善意だけでは通じない。相手の受け取り方次第で、ハラスメントになってしまう。そんな現実を、ドラマは正面から描いたのです。
高田課長の言葉「それがコミュニケーションだよ」
この問題の根本にあるのは、やはりコミュニケーション不足でした。高田課長が自販機のシーンで言った言葉が、まさに核心をついています。
「実際、その人の立場にならないとわからないことっていっぱいあるよ。でも、全部の立場になるなんて不可能だろう。だからこそ話し合う。それがコミュニケーションだよ」
勝男は真面目で誠実です。でも、柳沢の立場や考え方を十分に理解しようとしなかった。一方で柳沢も、勝男の熱意や思いを受け止めようとしなかった。
お互いが歩み寄ろうとしなかった結果が、「おにハラ」という形で表面化したのです。
荷物をまとめて帰る勝男。南川と白崎、高田が心配そうに見送ります。勝男は笑顔で対応しますが、その表情の奥には複雑な感情が見え隠れしています。
「ちょうど休み取りたいと思ってたし、ちょうどいいな」
強がりの言葉が、かえって痛々しく響きました。
百五万円が消えた…鮎美を襲った店舗出店詐欺の衝撃
一方、鮎美は店舗入居日を迎えます。家を出る鮎美の表情は、晴れ晴れとしていました。新しい人生の始まりです。
しかし、店舗前で待っていると、引っ越し業者のトラックが止まり、店舗から男性が出てきます。
「どうぞお世話になります」
鮎美は不安そうに尋ねます。
「あ、え、あ、あのすいません。あの、どちら様ですか?」
男性の返答は衝撃的でした。
「ここの店主ですけど。来週からオープンするんです。イタリアンレストラン」
鮎美は混乱します。
「あ、いや。え?」
男性は鮎美を邪魔者扱いします。
「すいません。どいてもらっていいですか?」
慌てて離れる鮎美。電話をかけますが…
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」絶望の瞬間
愕然とする鮎美。詐欺だったのです。画面には、上空を飛ぶ一羽のサギ(鷺)が映ります。洒落にもならない演出です。
百五万円。鮎美がコツコツ貯めてきたお金。それが一瞬で消えてしまいました。残高は百二十万円あったので、ほとんど全てを失ったことになります。
長谷川の言葉を信じて、会社を辞めて、夢に向かって進もうとした矢先のこと。その絶望は計り知れません。
視聴者の多くが、この展開を予想していました。長谷川が登場した時点で「詐欺じゃないか」と疑う声が多数ありました。あまりにも話がうますぎたからです。
しかし、実際に詐欺だと確定した瞬間、視聴者も鮎美と一緒に絶望を味わいました。「やっぱり」という思いと、「鮎美が可哀想すぎる」という思いが交錯します。
自宅に戻った鮎美の部屋には、山積みのダンボール箱。店舗用に準備した食材や雑貨が詰まっています。それらを見るたびに、失ったものの大きさを実感するのでしょう。
冷蔵庫から試作品の保存容器を六段重ねで取り出し、座卓に並べる鮎美。蓋を取り、メキシカン春巻きを手づかみで食べます。
「よし、いただきます」
淡々と食べ続ける鮎美。この姿が、かえって痛々しく感じられました。
自販機地獄!勝男の最悪すぎる1日
出勤停止になった勝男は、暇を持て余します。スーパーでキャベツのレシピカードを手に取り、つぶやきます。
「明日も仕事だったらこんなの作る気なんないんだけど。だって、平日の夜にロールキャベツって笑っちゃいますよ、これ。誰が作れるんだって」
隣で品出しをしている店長が、心配そうに見ています。
「でも。今、山ほど時間ができちゃったので、ロールキャベツでも何でも作り放題です」
自嘲気味に笑う勝男。ロールキャベツを完成させて食べます。
「うーん、完璧」
しかし、その「完璧」という言葉が虚しく響きます。
時間を持て余した勝男は、老人たちに交ざってゲートボールをしたり、公園のベンチで絵を描いたり。でも、そこに充実感はありません。
絵を描いていると、鳥の糞が落ちてきます。
「うわっ、最悪。いや」
しかし、スケッチブックを見ると、糞が雲のように見えます。
「いや、完璧だ。きったね。最悪」
この「完璧」と「最悪」が交互に出てくるのが、勝男の心理状態を表しています。何をやっても虚しい。そんな日々です。
ネズミ捕りシートで抜けない腕、白骨化妄想まで
そして、運命の自販機シーンがやってきます。
自動販売機で飲み物を買おうとした勝男。近くで遊ぶ子供のサッカーボールが手に当たり、スマホが自販機の下へ転がっていきます。
地面に横になり、右手を突っ込む勝男。しかし届きません。側面から仰向けになって右手を突っ込むと、指先で押してしまい、さらに遠くなります。
そしてさらに腕を突っ込むと…ネズミ捕りのシート。
「うわ、あれ、何?何これ?」
腕が抜けない。
「え?何?何?何?うわ、待って。くっつい– 待って。やばいやばい。え?ちょっと待ってー」
周りには誰もいません。完全に一人です。
女の子が飲み物を買いに来ます。勝男は自販機を叩いて飲み物を出してあげますが、女の子は勝男が買った缶も一緒に持って去っていきます。
「うん。あ、ねえ、ちょっ–」
泣きそうな顔で辺りを見る勝男。
ここで勝男の妄想が入ります。挟まったまま白骨化した勝男。周りにはお供え物と、勝男を紹介する看板。劇場のように赤い幕とタイトル「じゃあ、あんたが作ってみろよ」が降りてくる…
「いやー」
自販機を押したり蹴ったり。完全にパニック状態です。
このシーンは、視聴者から「おもしろかった」「コメディとして最高」という声が多数上がりました。深刻な状況をコメディで描くことで、逆に勝男の追い詰められた心理が伝わってきます。
運命の再会とホルモン焼き屋での語らい
そこに、反対方向から歩いてくる鮎美。自販機を回り込んで、驚きます。
「え?カツオさん?」
勝男は必死に叫びます。
「鮎美!鮎美!これこれこれこれ」
鮎美は覗き込み、手を突っ込みます。
「何それ?」
そして会話が始まります。
「え、会社は?」
「会社を休んでる」
「えっ、ここで?」
「ここでじゃない、違う」
警察を呼んでもらい、ようやく解放される勝男。鮎美は思わず写真を撮ります。
「ねえ、真面目に」
2人は並んでベンチに座ります。
「カツオさんが挟まってた」
勝男は必死に言います。
「いや思い出さないで。記憶って思い出す度に定着するんだから。もう金輪際思い出さないで」
鮎美は笑います。
「いや無理だよ。もう思い出そうとしなくても出てきちゃう。もう、排水口に挟まった缶を見るたびに思い出しちゃいそう」
このやり取りが、2人の関係の変化を表しています。以前なら、勝男はこんな恥ずかしい姿を見せられなかったでしょう。でも今は、素の自分を見せられる。それが、成長の証でもあるのです。
勝男が鮎美に尋ねます。
「鮎美は?何してたの?」
鮎美は少し間を置いて答えます。
「あー…ちょっと。お店出す話、なくなっちゃった」
勝男も自分のことを話します。
「俺もさ、会社をちょっと。あー。ちょっとね」
お互いの状況を察し、2人は沈黙します。
「この後は?」
「ん?」
「この後」
「あ、いや、特に」
その時、2人でバッティングセンターに行きます。ホームランを打った勝男は興奮します。
「うわぁ!すごいホームラン!鮎美見た?」
「え、見てない見てない」
「なんで?」
このやり取りが、2人の間の気まずさを和らげます。そして自然な流れで、2人はメキシコ雑貨屋へ。
カラフルなカラベラ(骸骨の飾り)を見て、鮎美が言います。
「かわいい。え、ちょっとカツオさんに似てない?」
勝男も笑います。
「え、本当に似てる?」
「似てる」
「美味しいって思えたら、まだ大丈夫だなって」食べ物が繋ぐ2人
夜、七門というホルモン焼き屋の路面テーブル席で、2人は飲み始めます。
「ねえ、鮎美さあ。相当強いよね」
「そうだね。なんか強いという」
「だってほら、テキーラ飲んだもんね」
鮎美が告白します。
「あー、まあ、カツオさんの前では弱いふりしてたからね。本当は飲めるのに」
驚く勝男。
「なんでー?」
「なんでだろうね」
この会話が、2人の関係を象徴しています。鮎美は勝男の前で、本当の自分を隠していた。でも今は、正直に言える。
勝男も言います。
「あ、でも、私もカツオさんのこと全然知らなかった。だって完璧な人だと思ってたもん。超ハイスペック彼氏」
鮎美の答えが印象的です。
「うん、違う。戦力不器用男」
勝男は傷つきます。
「な、ひ、ひどくない?それ。なんでー?」
でも鮎美は続けます。
「でも今の方がいい」
この一言が、勝男の心を打ちます。完璧じゃなくていい。不器用でも、それが今の勝男の魅力なのだと。
カシラ(豚の頭肉)を注文し、2人は食べ始めます。大学時代に食べた硬いモツの思い出を語り、笑い合います。
そして勝男が言います。
「なんか、美味しいもん食べて、嫌なことが消えるわけじゃないんだけど、こうやって美味しいって思えたら、まだ大丈夫だなって思えるんだよね」
鮎美もうなずきます。
「うん、そうだね」
この言葉が、第9話のテーマです。詐欺に遭って百五万円を失った鮎美。パワハラ冤罪で出勤停止になった勝男。どちらも最悪の状況です。
でも、美味しいものを食べて、「美味しい」と思える。それだけで、まだ大丈夫。生きていける。そんなメッセージが込められています。
視聴者の投稿でも「おにぎり頬張りながらとかホルモンとかやばかった」「美味しいものを食べて、まだ美味しいと思える。それだけで生き返る小さな救いのある回」という声が多数ありました。
食べ物が持つ力。それは単なる栄養ではなく、心の支えにもなる。このドラマが一貫して描いてきたテーマが、ここで結実しています。
ホルモン焼き屋のポイントカードを見せ合う2人。実はお互い、同じ店に通っていたのです。でもすれ違っていた。
勝男が食べ方について指摘しようとすると、鮎美が遮ります。
「いいの、人それぞれ食べ方があるんだから。いいよ」
以前なら、勝男の指摘を受け入れていた鮎美。でも今は、自分の意見をしっかり言える。それも成長の証です。
「もう一回やり直そう」勝男の告白に視聴者号泣
ホルモン焼き屋を出て、並んで歩く2人。カツオと目が合い笑う鮎美。
立ち止まる2人。鮎美がカツオの横顔を見ます。何かを感じ取る鮎美。カツオは唾を飲み込み、鮎美に向き直ります。
そして、決意を込めて言います。
「もう一回やり直そう。俺たち」
鮎美の目が泳ぎます。
「今の俺たちならうまくいくと思う。鮎美も、俺も変わったし。前みたいにはならない」
鮎美は一度視線を下げ、顔を上げます。見つめ合う2人。
画面はここで終わり、次回予告へ。
全力不器用男の成長が詰まった名シーン
この告白シーンが、視聴者の心を鷲掴みにしました。
SNSでは「最後の『やり直さないか?』に、ハッピーエンドを望む気持ち半分、もっとかき回してほしい気持ち半分」「『もっかいやり直そ』の一言かっこよすぎて鳥肌たった」という声が多数ありました。
なぜこの告白がこれほど心を打つのか。それは、勝男の成長が詰まっているからです。
第1話で、勝男は完璧なプロポーズを準備しました。レストランを貸し切り、花束を用意し、婚約指輪を渡す。しかし、それは鮎美の気持ちを無視した、一方的なものでした。
今回の告白は違います。完璧な場所でもない。準備もしていない。ただ、素直な気持ちを伝えただけ。
「もう一回やり直そう」
このシンプルな言葉に、勝男の全てが込められています。
完璧主義だった勝男が、不器用ながらも自分の言葉で想いを伝える。その成長が、視聴者の涙を誘ったのです。
鮎美の反応も注目です。すぐには答えません。目が泳ぎ、視線を下げ、また顔を上げる。複雑な感情が表情に現れています。
勝男が変わったことは認めている。でも、やり直せるかどうかは別問題。店舗出店詐欺で傷ついたばかりの鮎美にとって、新しい決断をするのは簡単ではありません。
この「答えを出さない」終わり方が、視聴者の期待を最高潮に高めました。次回最終回で、鮎美はどう答えるのか。2人はどうなるのか。
最終回への期待が、これ以上ないほど高まった瞬間でした。
SNSで話題!視聴者の反応まとめ
第9話は、SNSで大きな話題になりました。
「心が折れそう」というセリフに共感の声続々
特に印象的だったのは、勝男のこのセリフです。
「心が折れそう」
これは台本には明確には書かれていませんでしたが、視聴者の多くがこの感情を受け取りました。おにハラで出勤停止、自販機に挟まる、という一連の流れで、勝男の心が完全に折れかけている様子が伝わってきたのです。
SNSでの投稿を見ると:
「『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第9話。「心が折れそう」勝男、よく言った!!!全力不器用男の勝男かっこいいし、見習いたい!!」
「勝男と鮎美が仲良くしてるの見ると嬉しくて泣きそうになる」
「9話はなかなか内容的にしんどいんだけどコメディパートがめちゃくちゃコメディしてて緩和されてて」
視聴者は、シリアスな展開とコメディのバランスを高く評価しています。重い内容だからこそ、自販機のシーンなどのコメディが生きる。その絶妙なバランスが、この回の魅力でした。
おにぎりハラスメントについても、多くの意見が飛び交いました:
「おにぎりハラスメント?おにハラって、いったい何なんだ?」
「価値観の問題では無いような気がしますがこれが今の時代の日本だとしたらもう明るい未来は見えてこないと思うし」
「あと勝男の名誉のために言うけど、あんなんじゃパワハラにならないからな」
賛否両論ありますが、それだけ視聴者が真剣に考えさせられた、ということでもあります。
詐欺についても、
「『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第9話『一緒に店を出そう』と言われた瞬間に詐欺を疑った100万以上もとられているわりにダメージが少なそうな鮎美」
「店起こし詐欺に合うは、勝男、嫌がらせでパワハラと見なされ出勤停止で自販機に挟まるは」
鮎美のダメージの描写が少ないという指摘もありましたが、これは最終回で描かれるのかもしれません。
そして最終回への期待
「最後の『やり直さないか?』に、ハッピーエンドを望む気持ち半分、もっとかき回してほしい気持ち半分。いずれにしても、来週は絶対見逃せないなぁ」
「遂に最終回!今からワクワクが止まりません」
多くの視聴者が、最終回を心待ちにしていることが伝わってきます。
まとめ:見どころと伏線
第9話の見どころと、気になるポイントをまとめます。
- 勝男の心からの謝罪:「今まで…鮎美のこと縛りつけてきてたんだなって。本当にごめん」という言葉に、勝男の成長が表れている
- おにぎりハラスメント問題:現代社会の価値観の違いを浮き彫りにした問題提起。善意が裏目に出る難しさを描いた
- 店舗出店詐欺の衝撃:百五万円を失った鮎美の絶望。長谷川は本当に悪意があったのか、最終回で明かされるのか
- 自販機コメディ:シリアスな展開の中で、笑いを提供したコメディシーン。白骨化妄想まで飛び出す勝男の想像力
- ホルモン焼き屋での語らい:「美味しいって思えたら、まだ大丈夫」という言葉に込められた、食べ物が持つ力
- 復縁告白「もう一回やり直そう」:不器用ながらも素直に想いを伝えた勝男。鮎美の答えは?最終回への最大の期待
第9話は、コメディと感動が絶妙にバランスした神回でした。最悪の1日を迎えた2人が、食べ物を通じて再び繋がり、新しい一歩を踏み出そうとする姿に、多くの視聴者が涙しました。
最終回で、2人はどんな答えを出すのか。忍耐女と全力不器用男の物語は、どんな結末を迎えるのか。目が離せません!










