2025年12月7日放送の『ザ・ロイヤルファミリー』第9話「鐙~あぶみ~」は、まさに涙なしでは見られない感動回でした。天皇賞・秋での落馬事故から、ファミリーの角膜損傷、翔平の骨折という二重の試練。さらにライバル・ソーパーフェクトにはルメール騎手が騎乗するという衝撃展開。それでも諦めない耕一と翔平、そして日高の仲間たちの絆が、視聴者の心を激しく揺さぶりました。加奈子からの逆プロポーズ、翔平が見つけた「新しい自分」、そしてファミリーの奇跡的な復活――。最終回の有馬記念に向けて、すべての伏線が完璧に収束していく神回でした。
ザ・ロイヤルファミリー第9話のあらすじ
2024年、天皇賞・秋での落馬事故により、ファミリーは角膜損傷で失明の危機に、翔平は骨折で4ヶ月の離脱を余儀なくされます。耕一はフランスまで飛び、角膜移植ができる獣医・沢渡先生を説得。一方、復帰後も成績が出ない翔平は、隆二郎の助言で「鐙の位置」を変え、新しい自分を見つけます。日高の牧場仲間たちの協力でファミリーは治療を続け、ついに最終テストに成功。そして加奈子は栗須にプロポーズし、二人は結婚を決意します。しかしライバル・ソーパーフェクトにはルメール騎手が騎乗することに。絶体絶命の状況でも、耕一は「今年の有馬」を宣言します。
ルメール登場の衝撃―「最強のコンビ」が立ちはだかる
第9話のクライマックスで明かされた最大の衝撃、それはソーパーフェクトの鞍上にクリストフ・ルメール騎手が騎乗するという事実でした。
皐月賞のレース映像で、実際のルメール騎手本人が登場するというサプライズ演出。競馬ファンからは「ドラマでもルメールは最強」「ラスボス感半端ない」と興奮の声が上がりました。
「ソウパーフェクト1着でゴール!クラシック第1戦クリストフ・ルメール鞍上ソウパーフェクト!」
実況の声が響く中、圧倒的な強さを見せつけるソーパーフェクト。現実の競馬界でもトップジョッキーとして君臨するルメール騎手が、ドラマの世界でも「最強の壁」として立ちはだかる構図は、視聴者に強烈なインパクトを与えました。
さらに驚くべきは、次回予告で使用された映像です。SNSでは
「次回予告、発走前の横からは1枠1番の社台服より2023年有馬記念!レース映像はピン帽の白い金子服に1と14のダノン2024年有馬記念ですねぇ!」
という指摘が。実在の名レース映像を織り交ぜることで、クライマックスのリアリティを極限まで高めています。
ソーパーフェクト二冠達成、そして史上初の快挙を狙う展之の野望
ダービーを制した後のインタビューで、展之は衝撃的な宣言をします。
「皐月賞、ダービー、菊花賞、そして有馬記念。相磯正臣さん、無敗のまま三冠と有馬制した馬って、過去何頭いましたっけ?」
「一頭もございません」
「じゃあうちが史上初だ」
この会話から、椎名展之が目指しているのは単なる三冠制覇ではなく、「無敗のまま三冠+有馬記念を制する」という前人未到の大記録だということが明らかになります。
「最低限でしょう。あの馬なら三冠は取って当然。むしろもっと上を目指さないと」
この展之の傲慢とも取れる発言ですが、彼もまた父・椎名社長が達成できなかった夢を背負っています。椎名展之の回想シーンで語られた展之の言葉が印象的でした。
「狙いますから。父さんもまだ達成してない。三冠制覇」
「G1は一つ勝つだけでも大変だ」
「三冠取れる馬ならそんなことは思わないかもしれませんよ」
ゲーム感覚で競馬を語る展之に、椎名は複雑な表情を見せます。しかし、展之の中にも「父を超えたい」という切実な思いがあることが伝わってきます。
耕一と展之、二人の「父の夢を継ぐ息子」が、有馬記念という舞台で激突する――。最終回への期待が一気に高まる展開です。
天皇賞・秋の悲劇―落馬事故がもたらした二重の試練
第9話の物語は、2024年の天皇賞・秋から始まります。初のG1挑戦という大舞台で、ファミリーと翔平を襲った悲劇。
「オーナーの中条耕一にとっても、ジョッキーの野崎翔平にとっても、初の大舞台である」
そんなナレーションの声が響く中、レース終盤で事故は起こります。
「あーっと一頭落馬、落馬です。ロイヤルファミリーが野崎翔平落馬。さあ、先頭争いですが」
外に持ち出したファミリーが突然バランスを崩し、翔平を振り落としました。ファミリーは走ることをやめ、その場に立ち止まってしまいます。
「レース終盤、外に持ち出したファミリーが突然バランスを崩し、そのまま翔平を振り落とした。ファミリーは走ることをやめ、立ち止まった。目標の有馬記念まであと一年。それは絶望にも近い出来事だった」
この描写が、事故の深刻さを物語っています。担架で運ばれる翔平を見て、栗須と佳菜子は言葉を失います。
診断結果は、ファミリーは骨折で半年、翔平は足首の骨折で4ヶ月の離脱。しかし栗須は冷静に状況を分析します。
「不幸中の幸いは、我々は来年の有馬に照準を合わせていたってことだよ。大丈夫。ファミリーにも翔平にも時間はある」
この言葉に、栗須の楽観的な性格と、チームを支える強さが表れています。
「角膜滋湿膿瘍」―ファミリーを襲った失明の危機
しかし、事態はさらに深刻化します。療養を終えて日高に戻ってきたファミリーに異変が起こります。
「なんか落ち着きがないね」
「あ、そう。戻ってきたから、絶端な感じで」
栗須と佳菜子の会話の後、野崎剛史がファミリーの異変に気づきます。
「あれ、やっぱりもういっぺん医者に診せた方がいいな」
「うん、もう脚に異常はないって」
「いや、脚でね。涙出てるし、痛がってる。右目だ」
獣医からもたらされた診断名は「角膜滋湿膿瘍」。
「角膜の中間層に膿が溜まった状態のことです。過去に何らかの原因で角膜に傷がつき、傷自体は治ったものの、内部で細菌や真菌が増殖した。残念ながら薬物療法では炎症の軽減が見られませんでした。最悪の場合、失明の可能性も」
「失明?」
加奈子の驚きの声。そして獣医が告げた原因。
「去年の天皇賞の落馬事故。もしかしたら前走馬の蹴り上げた土のかたまりがファミリーの右目に当たったことが原因かもしれません。あの時、気づいていれば」
「申し訳ありません」
と頭を下げる広中に、栗須は
「頭を上げてください。誰のせいでもありませんから」
と優しく声をかけます。
治療法は二つ。濃厚の外科的切除か、角膜移植。しかし獣医は続けます。
「角膜移植という方法もあるにはあるんですが、国内に馬の角膜移植を執刀できる獣医がいないんです」
「片目を失ってもレースを走ることは可能です。実際にそういう競走馬もいます。ただ、ただ、右回りの競馬場で右目を失った馬がまともにレースを走ることは至難の業です」
「つまり、有馬記念は」
「ファミリーが勝つことは難しいと思います」
この会話で、視聴者は絶望的な状況を突きつけられます。有馬記念は右回りの中山競馬場。右目を失えば、勝利は不可能――。
広中はさらに厳しい選択肢を提示します。
「片目が見えない危険な状態でレースに出ることがベストな選択とは思いません。私が言うことではありませんが、ここは引退という選択肢も」
「引退?」
「無理してレースに出れば、最悪取り返しのつかない事故を起こすこともあります。そうなれば引退どころか」
ファミリーの命にも関わる――。その重大さが、耕一と栗須の表情から伝わってきます。
翔平の苦悩「俺のせいで牧場が潰れる」
一方、翔平も深刻な状況に陥っていました。医師の許可を得て復帰したものの、2月の復帰レースは12着。
「その後も騎乗した全てのレースで入着することができなかった」
という状況が続きます。
美浦トレーニングセンターで、左足を気にする翔平に栗須が声をかけます。
「今成績が出ないのは慣らし期間だからだよ。焦ることはない」
「焦ります。このまま脚が戻らないかもしれないんです」
「そんなことはないって。現に乗れてるじゃないか」
「乗れればいいわけじゃないですよね。勝たなきゃ意味ないじゃないですか。復帰してからは一度も入着できてないんですよ、俺は」
そして翔平は、自分を責める言葉を口にします。
「すいません。広中さんに聞きました。ファミリーが怪我したのも俺の責任です」
「一人で背負い込むな」
「もしファミリーが復帰できても、俺が元に戻らなかったら」
翔平はヘルメットとムチを持って去っていきます。その後、競馬場の柵にもたれ、うなだれる翔平の姿が切なく描かれます。
絶望的な状況で耕一が吐露するシーンがあります。定食屋で耕一に語りかける場面です。
「馬の幸せって、なんだと思いますか?右目を失っても、レースに出られる馬がいる。確かに、競走馬は走る生き物です。でもファミリーは、それでも嬉しいんでしょうか?」
「広中さんの言う通り、ファミリーの引退も考えるべきなのかもしれません。でも、前にも言いましたけど、ファミリーが生涯不自由なく暮らし続けられるだけの賞金を稼ぐことが、僕の最低限の目標です。それが僕なりに考えた馬の幸せだから。でもそれも、走らないと稼げない、走らなきゃいけないんですファミリーは。これって、人間のエゴなんですかね。僕のエゴに付き合わせてるだけなんでしょうか」
この耕一の問いかけは、競馬に関わる全ての人が抱える葛藤そのものです。「馬のため」と言いながら、本当は人間の夢を押し付けているだけなのではないか――。その苦悩が痛いほど伝わってきます。
そして、栗須と翔平が厩舎で衝突するシーンが訪れます。
「調教の時間だろ、翔平」
「これ以上チームに迷惑かけたくないんで」
「だからってここにいてどうするんだよ。お前、ファミリーからも降りたいと思ってるのか?誰も迷惑なんて思ってない。お前プロだろ?ジョッキーなら馬から逃げるな」「ジョッキーでもないのに偉そうなこと言わないでください。俺言いましたよね。ただ乗ればいいわけじゃない。担いがいないって。そういう馬ですよね。ファミリーって。もう二度とチャンスがない馬なんです。なのにもし俺のせいでファミリーが勝てなかったら、うちの牧場の未来だって、ファミリーが負ければそこまでなんです。潰れるんです!牧場が。じいちゃんやかあちゃんが守ってきた場所が俺のせいで。その時、栗須さんは何かできるんですか?」
「乗りたくないんじゃない?俺は乗れないって言ってるんです」
この言葉に、翔平の苦しみが全て詰まっています。乗りたくないのではなく、乗れない――。技術が戻らない自分への絶望と、家族への責任感が、翔平を追い詰めていました。
栗須は最後の問いかけをします。
「お前がファミリーに乗ってるのは、誰かのためなのか?誰かのためにジョッキーになったのか?」
翔平は振り切って去っていきます。切なげに見送る栗須は、佳菜子に電話をかけようとしますが、できずにスマホを持った手を下ろします。
この一連のシーンは、市原匠悟さんの表情演技が光る名場面でした。苦悩、葛藤、絶望――様々な感情が翔平の表情から伝わってきます。
耕一、フランスへ―「勝たせてほしい」父の遺志を継ぐ旅
絶望的な状況の中、突破口を開いたのは記者の平良恒明でした。
「やりました。角膜移植できる獣医見つけました。手当たり次第に聞きまくって、やっといい場所を突き止めました」
「どこにいるの?」
「フランス。日本人で昔立陶宛にいて、今はフランスの大学で獣医学の研究してるって」
耕一は即座に決断し、フランスに飛びます。シェルブール大学で出会ったのは、沢渡ゆうき先生。しかし彼女は冷たく言い放ちます。
「メールでお断りしましたよね」
それでも耕一は食い下がります。
「動画だけでも見てもらえませんか?今年が勝負の馬です。ロイヤルファミリーって言うんですけど」
「ロイヤル?」
「はい」
「ロイヤルってあの山王耕造さんのロイヤル?」「あ、はい、そうです。ご存知なんですか?」
沢渡先生は苦笑しながら答えます。
「えー。あの時代錯誤の昭和オヤジ。一度ドレセンの診療所で怒鳴られたことがあるんですよ。ものすごい剣幕で。お前、直せばいいと思ってんだろって。当たり前じゃないの。ねー。あそこの馬かぁ」
この会話から、沢渡先生が耕造と面識があったことが判明します。そして、耕造の「馬への向き合い方」を知る数少ない人物でもあることが分かります。
沢渡先生との出会い「そっくり。親子そろって無茶を言いますね」
フランスの飲食店で、耕一は沢渡先生に自分の思いを語ります。
「あの人は僕に何かを遺したくて仕方がなかったみたいなんですよ。でも僕がそれを断り続けて。で、それでも父は諦めず、亡くなる前に託されたのが有馬記念で勝つっていう夢でした。イメージ通り自己中心的ですよね。絶対関わりたくない」
「いや、僕だってそうですよ。だっていきなり来て受け取れとか相続しろってちょっとおかしいんですよ。でも父はこうも言ってくれたんです。馬のことなら俺より分かってるって。会ったこともなかった父親がお前ならきっとできるって」
「多分僕はそこにすがりたいだけなのかもしれません。有馬記念で勝つっていう父の夢を叶えれば、僕が生まれてきたことに意味が生まれるのかもしれない」
沢渡先生は優しく諭します。
「あなたはあなたですよ。生まれてきたこと自体に意味があるんです」
しかし耕一は続けます。
「でも、僕は胸を張って言いたいんです。あの人の子だって、同じ血が流れてんだよって」
そして、耕一は核心を突く言葉を口にします。
「先生、僕がお願いしてるのは直すことじゃないんです。勝たせてほしいんです。勝つために直してほしいんです。今年の有馬記念で勝つためにファミリーの右目を」
この言葉に、沢渡先生は驚きます。
「そっくり」
「お父さんとお話しましたよね。直せばいいと思ってんだろって怒鳴られたって」
「何言ってんのこのおっさんって思ったんですけど。その後、さあのお世続けてこう言ったんです。馬は治したいと思ってんじゃねえ、勝ちたいと思ってんだ。馬のためを思うなら直して満足してんじゃねえぞって」「無茶を言いますね。親子そろって」
この「親子そろって」という言葉が、耕一を認める沢渡先生の思いを表しています。そして彼女は、耕一の依頼を引き受けることを決意します。
後に、オペ直前に沢渡先生が語った言葉が印象的です。
「あなたを信じてる人がいる。あなたは幸せよ。オペの準備お願いします」
「勝たせるのは私じゃない。あなたたち。私はその条件を整えただけです」
この言葉は、競馬に関わる全ての人々――オーナー、調教師、騎手、牧場スタッフ、獣医――それぞれの役割を象徴しています。誰か一人が欠けても、勝利は成し遂げられない。チームとしての「ロイヤルファミリー」が、ここに完成したのです。
翔平の再生―「鐙」が導いた新しい自分
翔平が答えを見つけるきっかけを与えたのは、意外な人物でした。かつてファミリーの主戦騎手だった隆二郎です。
「どうしてもわからないんです。どうすれば前の自分に戻れるのか」
翔平の必死の問いかけに、隆二郎は冷たく言い放ちます。
「無駄だよ。元には戻らない。諦めろ」
「諦めません。有馬で勝つためにジョッキーになったんです。諦めません」
しかし隆二郎の言葉は、翔平が思っていたものとは違いました。
「誰が勝つことを諦めろって言ったんだよ」
「え?」
そして隆二郎は続けます。
「あぶみの位置から変えろ。前のフォームはもうなし。新しい自分を見つけるんだよ」
この「鐙(あぶみ)」こそ、第9話のサブタイトルであり、物語の核心です。
トレーナーとの会話で、翔平は自分の違和感を言語化します。
「走ってると重心が前後にブレてる感じがして」
「少し伸ばしてバランス見てみようか」
翔平が長年染み付いたフォームを変える決意をして臨んでいることが表れています。
隆二郎の言葉「前のフォームはもうなし。新しい自分を見つけるんだよ」
隆二郎のアドバイスは、単なる技術論ではありません。
「元の自分に戻ろうとするな。新しい自分になれ」
というメッセージです。
翔平は、怪我をする前の自分に戻ろうと必死にもがいていました。しかし身体は変わってしまった。だからこそ、その変化を受け入れ、新しい騎乗スタイルを確立する必要があったのです。
この「変化を受け入れる」というテーマは、ドラマ全体を貫くテーマでもあります。
耕一もまた、「父の夢を継ぐ」ことで新しい自分を見つけました。佳菜子は、父の牧場を守りながら、新しい未来を切り開こうとしています。そして翔平も、「鐙の位置」を変えることで、新しいジョッキー・野崎翔平として生まれ変わろうとしているのです。
トレーナーとの調整シーンで、翔平の真剣な表情が印象的でした。
「現状のあぶみの位置で何か違和感はある」
「走ってると重心が前後にブレてる感じがして」
「少し伸ばしてバランス見てみようか」
この会話から、翔平が具体的に自分の身体と向き合い、技術的な改善を模索していることが分かります。
栗須との和解「ホープとファミリーと自分との約束のため」
翔平が答えを見つけた後、彼は栗須のもとに戻ってきます。厩舎で掃除をしている栗須に、翔平は語りかけます。
「昨日はすまなかった。恥ずかしいよ。説得するつもりがさ。逆に俺の方が説教されて。俺にできることなんだろうな」
「俺の方こそすいませんでした」
そして翔平は、自分の答えを語ります。
「あのあと、答えをずっと考えてて。お袋と日高に行った頃、俺の友達は馬しかいませんでした。けどホープがいてくれたから、いつか有馬を一緒に走ろうって、そう約束したから、どんなことでも頑張ってこれた。俺がファミリーに乗る理由は誰のためでもない。ホープとファミリーと自分との約束のためです。俺はそんなこと忘れて、まだ何も果たせてないのに」
翔平の目から涙がこぼれ落ちます。栗須は翔平を抱きしめ、優しく言います。
「大丈夫だよ。お前はお前のやるべきことをやれ」
このシーンは、第9話で最も感動的な場面の一つです。翔平が「誰のため」ではなく、「自分自身の約束のため」に走ることを選んだ瞬間。それは、彼が本当の意味で成長した証でもあります。
市原匠悟さんと妻夫木聡さんの演技が光る名シーンでした。二人の抱擁に、視聴者からは「泣ける」「てえてえ(尊い)」という声が続出しました。
日高の絆―「一緒に闘わせてくれ」牧場仲間たちの温かさ
ファミリーの治療をめぐって、もう一つの感動エピソードがありました。それは日高の牧場仲間たちの協力です。
耕一と栗須が、ファミリーを野崎ファームで治療させることを決めた際、佳菜子は不安を口にします。
「あの、それなんだけど」
牧場を手伝う父と話す佳菜子。
「ファミリーが育成牧場に移るまでの間、治療とうちの牧場の仕事を手伝わせてもらえないかって」
「わりぃな。俺がもうちと体動けばな」
「何言ってんの。なんぼだ」
そこに集まってきた日高の牧場オーナーたち。彼らは口々に協力を申し出ます。
「診療所までのバン車ならうちが出すからさ」
「力仕事は若い奴らに任せてくれや」「そうだそうだよ。日高はお前らだけのもんじゃねえんだ」
そして、印象的な言葉が続きます。
「俺たちだってここで生きてんだ。闘わせてくれ。一緒に」
この言葉に、栗須は以前椎名社長から言われた言葉を思い出します。北陵ファームという巨大な牧場に対抗するには、個々の牧場では太刀打ちできない。しかし、日高の牧場が一つになれば、大きな力になる――。
栗須は涙をこらえながら笑顔で答えます。
「やってやりましょう。皆さん、ロイヤルファミリーを絶対に復活させましょう」
「おー!よっしゃ!よっしゃ!」
このシーンは、競馬の世界における「産地の絆」を象徴しています。北海道・日高地方は、日本競馬を支える重要な生産地。そこで暮らす人々が、互いに支え合いながら馬を育てている――。その現実が、ドラマの中でも美しく描かれました。
加奈子と栗須の「日高の星って書かれてるでしょ?」という会話シーンも話題になりました。
「日高の星って書かれてるでしょ?」
「あー、平良さんに?」
「そう。あれ、すごく嫌なんだって」
「えー!」
「馬の名前みたいじゃないかって」「あー、野崎ファーム生産、日高の星」
「日高の星」
「1着は、日高の星。日高の星が有馬を制しました」
このやり取りは、翔平が「日高の星」として期待されることへのプレッシャーと、同時にそれを背負う覚悟を示唆しています。翔平自身が「日高の希望」として、ファミリーとともに走る――。最終回への大きな伏線です。
加奈子から栗須への逆プロポーズ―「私はあなたと家族になって迎えたい」
そして第9話最大の「胸キュン」シーンが訪れます。加奈子から栗須(クリス)への逆プロポーズです。
ファミリーの最終テストを終えた夕方、草原に立つ二人。加奈子が静かに語りかけます。
「この景色、心に焼き付けておかないといつでも思い出せるように」
「そんなことしなくても、いつだって来られるだろう」
「今、この景色は、今この瞬間しかないんだよ」
そして加奈子は、決意を込めて言います。
「私たち結婚しようか」
「今、この景色も、これから起きるいろいろなことも。私はあなたと家族になって迎えたいって、そう思ったの。だから、結婚してほしい」
「言ったでしょ、私が決めるって」
栗須は必至に涙を堪え笑い、答えます。
「よろしくお願いします」
しかし加奈子は茶目っ気たっぷりに返します。
「あ?聞こえない」
「よろしくお願いしまーす。よろしくお願いしまーす!」
この逆プロポーズシーンは、視聴者から「涙が出た」「漢らしくて素敵」と絶賛されました。
ドラマの冒頭で、広中たちが栗須に「結婚しないの?」と聞くシーンがありました。
「ちょっと聞いてますよ」
「聞こえてますよ。何で今?」
「いや、なんか緊張しちゃうから、別の話をしようかなって」
その後の栗須の独白。
「いや、つもりならありますよ。してるんですよ、プロポーズだって」
「あ、してるんだ」
「何年も前に。でも今じゃないって。それっきり、何も。今更聞けますか?プロポーズのことなんだけどって。あたしには聞けない。恐ろしくて」
このやり取りがあったからこそ、加奈子の逆プロポーズがより一層感動的に響きます。
「私が決める」
と言った加奈子が、本当に自分から結婚を決断した――。その強さと優しさが、視聴者の心を打ちました。
松本若菜さんと妻夫木聡さんの息の合った演技が光る名シーンです。二人の笑顔が、ドラマの中で一瞬の幸福な時間を作り出しました。
最終テストの奇跡―ファミリーと翔平、再び走る
そしてついに、運命の最終テストが行われます。
「天皇賞の落馬から約ヶ月、ロイヤルファミリーと野崎翔平が再びレースに戻るための最終テストが行われることになった」
坂路の上で待ち構える耕一と栗須。無線で連絡を取り合います。
「今から行きます」
「了解。いつでも」
翔平がファミリーに語りかけます。
「行こうか、ファミリー」
蕾に乗せた脚でファミリーに合図を送る。ファミリーが尻尾を振り走り出す
この描写が美しい。馬が「尻尾を振る」という動作は、リラックスしている証拠。ファミリーが翔平を信頼し、走ることを楽しんでいることが伝わってきます。
「風を切って走るファミリー。車で追いかける佳菜子と広中。安定した翔平のフォーム。運転しながら祈る佳菜子。坂路を駆け上がっていくファミリー。力強い走り」
耕一と栗須が声を上げます。
「来た。よし。行け、行け、よし、出てるぞ」
そのまま草原のコースを走っていく翔平とファミリー。その背中へガッツポーズを送る耕一と栗須。
車を降りた佳菜子が、涙を流しながら叫びます。
「翔平!」
小さくなっていく翔平の姿、佳菜子はぽろぽろと涙を流し見つめ続ける」
翔平は下馬し、ファミリーに語りかけます。
「ファミリー強くなったんだな。俺もなるよ。もっと強くなる」
遠くから見つめる耕一と栗須。栗須は目を潤ませうなずきます。
このシーンは、第9話のクライマックスと言ってもいい感動場面です。角膜移植を乗り越えたファミリー、鐙の位置を変えて新しい自分を見つけた翔平――。二人(一人と一頭)が、再び一つになった瞬間です。
市原匠悟さんの「ファミリー強くなったんだな。俺もなるよ。もっと強くなる」という台詞の言い方が秀逸でした。決意と優しさが混ざり合った、翔平の成長を象徴する言葉です。
有馬記念への決意―「今が全盛期です」耕一の覚悟
最終テストに成功したロイヤルファミリー。しかし、有馬記念出場への道のりは依然として険しいものでした。
記者会見を見て、広中から厳しい質問が飛びます。
「ソウパーフェクトがいる限り、厳しい戦いを強いられることは間違いありません。改めて聞きます。今年の有馬、本当に狙えますか?」
「出るだけでも奇跡。諦めるのも勇気です。レースは来年もあるんです。それでも、今年の有馬、狙えますか?」
耕一は、毅然として答えます。
「来年が万全だと言える根拠もありません。ファミリーは、今が全盛期です。夢は頂点。それが、我々の使命です」
この
「ファミリーは、今が全盛期です」
という言葉が、耕一の覚悟を表しています。
来年を待てば、ファミリーは5歳になり、馬齢重量が増える。さらに、今回の怪我の影響がいつ出るか分からない。だからこそ、「今」しかないのです。
しかし椎名社長と隆二郎がカウンターバーで飲んでいる中、隆二郎が冷静に言い放ちます。
「無理でしょう。あの人たち、この年まだ一戦も走ってないんですよ。重賞に出て、毎回1着を取るくらいの結果を出さないと、賞金額が足りてない」
「ファン投票は」
「内容次第でしょう。お客さんも、勝てない馬には託せない」
絶望的な状況。それでも耕一は、過去の言葉を思い出します。
「忘れ物を取りに行くぞ。有馬記念」
「有馬を勝つ」
「有馬記念で勝ってください」
「有馬で勝ちたい」
様々な人々の「有馬への思い」が、耕一の脳裏を駆け巡ります。そして耕一は宣言します。
「夢は、頂点。必ず意志をして、有馬の出走条件をクリアいたします。負けていいレースなど一つもない。これも運命だと思ってください」
「僕たちのチーム、ロイヤルファミリーは、一人も諦めておりません。勝つことでしか報われない時間がある。ここまでの時間、全てに向かいたい」
この言葉に、耕一の強い決意が表れています。そして彼は、父・耕造が言い続けてきた「夢は頂点」という言葉を、自分のものとして語っているのです。
一方、隆二郎と椎名社長の会話も印象的でした。
「はあ。というか、人のことより自分の心配をしたらどうですか。そこまで来てますよ。世代交代の波が」
椎名社長は、何かを考え込むように静かに立っています。次回予告では、椎名社長が「封筒」を手にしているシーンが映し出されました。これは何を意味するのか――。新しい世代の馬なのか、それとも別の何かなのか。最終回への大きな伏線です。
6. まとめ
【第9話の見どころ・伏線まとめ】
- ルメール騎手本人出演の衝撃 – ソーパーフェクトの鞍上に現実世界でも最強のジョッキーが騎乗。有馬記念での「最強の壁」として立ちはだかる構図が完成。実在のレース映像を使用したリアリティも話題に。
- 加奈子から栗須への逆プロポーズが感動的 – 「私が決める」と言っていた加奈子が、草原で栗須にプロポーズ。「私はあなたと家族になって迎えたい」という言葉に、二人の絆の強さと未来への希望が込められている。松本若菜さんと妻夫木聡さんの演技が光る名シーン。
- 翔平の成長―「鐙」が導いた新しい自分 – 隆二郎の助言で鐙の位置を変え、新しい騎乗フォームを確立。「元に戻る」のではなく「新しい自分になる」という成長の物語。目黒蓮さんの表情演技が秀逸で、苦悩から覚悟への変化が丁寧に描かれた。
- 日高の絆―「一緒に闘わせてくれ」 – 牧場仲間たちがファミリーの治療に協力する姿が感動的。「日高はお前らだけのもんじゃねえんだ」という言葉に、産地全体で馬を育てる精神が表れている。最終回でこの絆がどう活きるか注目。
- 角膜移植の奇跡―沢渡先生と耕一の会話 – 「勝たせてほしい」という耕一の言葉に、父・耕造との共通点を見出す沢渡先生。「そっくり。親子そろって無茶を言いますね」という台詞が、耕一が父の意志を継いだことを象徴している。
- 「今が全盛期」という耕一の覚悟 – 来年を待たず、今年の有馬に挑むという決断。ファミリーにとっての「最高の今」を逃さない覚悟が、最終回への期待を高める。絶望的な状況でも諦めないチーム・ロイヤルファミリーの姿勢が印象的。
第9話「鐙~あぶみ~」は、最終回へ向けた完璧な布石でした。ルメールという「最強の壁」、翔平の成長、ファミリーの復活、そして栗須と加奈子の結婚――。すべての要素が、有馬記念という舞台に向けて収束していきます。
「夢は、頂点」――この言葉が、次回どのような結末を迎えるのか。12月14日の最終回が待ちきれません!










