【ラブドワン 第9話】MEJ閉鎖の衝撃と「許さない」の真相──タコツボ型心筋症が示した孤独死の核心

「許さない」という言葉だけを残して死んでいった老人。その憤りが示したものは、怒りではなく、ただひたすらな「会いたい」という気持ちでした。第9話は、孤独死事件の謎解きを通じて、近すぎるがゆえに素直に伝えられない想いと、人はひとりでは生きていけないというシンプルで重い真実を、画面いっぱいに叩きつけてくる回でした。

目次

ラブドワン 第9話 あらすじ

アパートすみれ荘の一室で孤独死した須崎秀夫(小宮孝泰)、75歳。持病による自然死の可能性もある中、室内には「許さない」と書き殴られたメモが残されており、水沢真澄(ディーン・フジオカ)と桐生麻帆(瀧内公美)たちMEJは他殺の可能性も視野に捜査を開始する。後頭部の外傷・慢性硬膜下血腫・右腕の擦り傷など複数の症状が見つかるが、いずれも決定的な死因には結びつかない。

現場を訪れた検査技師・吉本由季子(川床明日香)が気づいたのは、整理された冷蔵庫・高い棚に収納された調理器具・毎週金曜の日付に赤い丸がついたカレンダーという”些細な違和感”。その発見が、須崎の最後の日々をゆっくりと照らし出していく。やがて明らかになった真相は、一人の元泥棒・林田靖彦(前原滉)との、ありえないほど温かい縁の話でした。

「許さない」──その言葉が本当に意味していたもの

壁に残されていたのは、たった一言。「許さない」。

孤独死した老人が残したこのメモは、最初は他殺の証拠として疑われ、犯人への怒りを示すものとして捜査の焦点になります。しかし第9話のラストで明かされた真相は、それよりはるかに胸を締め付けるものでした。

須崎さんが「二度と許さない」と約束させた相手。それは毎週金曜に買い物をして料理を作りに来てくれていた林田靖彦(前原滉)でした。林田が「またやって」捕まり、来なくなった金曜日。須崎さんは一人でスーパーへ向かい、転倒して頭を強打します。その後、慢性硬膜下血腫で徐々に体の自由が利かなくなりながら、それでも林田を待ち続けました。

右腕だけを使って畳の上を這い、玄関に向かおうとした痕跡。布団から玄関へと続く体液のシミ。ペンを手にして、うまく動かない手で書き殴った「許さない」という文字。その隣に、絶望的な沈黙が続いた数日間が見えてきます。

林田が水沢真澄(ディーン・フジオカ)に語ります。

「もし俺がまたやったら。その時は二度と許さないって言ってました。」

须崎さんにとってその「許さない」は、約束を破った林田への怒りであると同時に、もう会えないかもしれないという絶望でもあったはずです。SNSでも「あまりにも感情移入し過ぎて号泣」「须崎さんが衰弱しながらも必死に玄関開けようとしてて、あまりにも辛すぎる」という声が相次ぎました。

泥棒が始めた金曜日──林田と須崎、奇妙で温かい縁

「三万で飯作ってくれないか?」──空き巣が変えた日常

およそ3か月前。林田靖彦はすみれ荘の窓から須崎さんの部屋に侵入します。引き出しを物色していたそのとき、ドアが開いて须崎さんが帰ってきました。ここで普通なら逃げるか、最悪の事態になるか。しかし須崎さんが取った行動は、誰も予想しないものでした。

棚から封筒を取り出してお札を抜き取り、林田の前に差し出しながら言ったのです。

「金が欲しいんだな。」

そしてコンビニの袋から海苔弁当を取り出して蓋を開け、食べながら続けます。

「何だよ。お前。飯作れるか?その三万で。三万で飯作ってくれないか?」

この場面の小宮孝泰さんの飄々とした存在感と、前原滉さんが見せる混乱と戸惑いの顔の対比が、今話屈指の名場面です。林田は後に真澄への取り調べで語ります。

「なんかその時、父親のこと思い出しちゃって。そのまま金持って逃げればよかったのに。気づいたら普通に買い物してて。」

こうして始まった二人の関係は、毎週の「買い物と料理」という習慣へと変わっていきます。スーパーさくらで安い人参を選ぶ林田。カレーを一緒に食べる二人。流しに重なる、食べ終わった二枚の空皿。

SNSでは「最初はただの泥棒と老人だったはずなのに」「須崎さんは金曜日を楽しみにしてて、足腰悪い中スーパーまでいって」という声が溢れ、小宮孝泰さんと前原滉さんの演技が絶賛されました。

赤い丸の意味と、来なくなった金曜日

現場の冷蔵庫に貼られたカレンダーには、3月13日から毎週金曜の日付に赤い丸がついていました。吉本由季子(川床明日香)が現場で見つけたスーパーのレシートも合計8枚。日付はすべて赤丸のついた金曜日と一致します。

このカレンダーの赤い丸には、意味がありました。

「いいことがあった日は、こうやって赤い丸をつける。そうすると、もっとたくさん丸で埋めたくなって。もう何でもない日はいい日になってくんだよ。」

これは須崎さんがかつて語った言葉。林田が来た日は、いい日だった。だから赤い丸をつけた。

しかしあるとき、丸がつかなくなります。林田がまた窃盗をして捕まった金曜日。须崎さんは一人でスーパーへ向かい、そこで若者とぶつかって転倒、頭を強打します。

「林田さんが来なかった金曜日。須崎さん、一人でスーパーに行っていました。」

「林田さんを、探しに行ったのかなと思います。」

吉本の静かな言葉が、画面の前の視聴者の胸を静かに締め付けます。

吉本由季子が現場で気づいた”些細な違和感”

高い棚の調理器具と、「一人じゃなかった」という気づき

真澄が由季子に現場訪問を頼んだのは、彼女が须崎さんの境遇に自分の父親を重ねていたからでした。退職直後に妻を亡くし、一人でふさぎ込んでいる父・茂(遠山俊也)の姿と、孤独死した须崎さんの姿がどこかで重なる。「他人事に思えない」という由季子の目線が、誰も気づかなかった真実に手が届くという真澄の読みです。

由季子が現場で最初に気づいたのは、冷蔵庫の中身の整理具合と、使いかけの野菜や調味料の豊富さでした。そして棚のかなり上の方に収納された調理器具。身長168センチの吉本がジャンプしてやっと届く高さ。杖を使っていた须崎さんには到底届かない場所。

「須崎さん。一人じゃなかったのではないでしょうか?」

つまり、調理器具を使っていたのは須崎さん以外の誰かだということ。これが今話の核心へと一気に近づくターニングポイントです。

タコツボ型心筋症──林田に会えなかったストレスが死因だった

解剖によって判明した死因は、タコツボ型心筋症。身体的・精神的なストレスがかかった際に心臓の左心室の先端が収縮しなくなり、心臓がタコツボのような形になる心筋症です。通常は一過性のことが多いですが、重症化すると死亡する例も報告されています。

「須崎さんにとっての強いストレスとは。林田さんに、会えなくなってしまったことだったのかもしれません。」

林田への怒り、そして待ち続けた絶望感。麻痺で動けなくなった状態でも、それでも玄関に向かおうとし続けた须崎さん。その強いストレスが、最終的に心臓を蝕んでいったのかもしれません。

右腕の擦り傷も、転倒による外傷ではありませんでした。麻痺した体を右腕だけの力で支えながら玄関に向かおうとした結果で、傷口には畳の植物性繊維が付着していたことがそれを証明します。

「衰弱と麻痺で動けなかった須崎さんが、右腕の力だけで必死に玄関に向かおうとした。だとしたら、全体重が右腕にかかってきますね。」

ラストの回想映像が、今話の感情的な核を完成させます。夕暮れの道を、レジ袋を両手に提げた林田と杖をついた须崎さんが並んでゆっくり歩いていく。他愛のない話に笑みを交わしながら、ゆっくりと帰路をたどっていく。「あまりにも辛すぎる」「号泣」という反応がSNSに溢れたシーンです。

由季子と父・茂──「また来るね」という言葉の重さ

第9話が「由季子回」と呼ばれる理由は、须崎さんの孤独死事件と彼女の父親の関係が巧みに重ね合わされているからです。

退職してすぐに妻を亡くし、一人でふさぎ込む父・茂。由季子は毎週実家に通い、散らかった部屋を片付け、料理を作り置きして帰ります。しかし茂は頑なに言い続けます。

「いいって。もう来なくていいって何回も言ってるだろう。」

それに対して由季子が返すのは、

「一人で倒れてても。誰も気づいてくれないよ。」

「別にいいよ、それで。よくないよ。」

近すぎるからこそ素直に言えない。娘が心配だと言えば「大げさだ」と言い返す父。しかし须崎さんの部屋でカレンダーの赤い丸の意味を知った由季子は、帰り道で父の部屋の卓上カレンダーに目が留まります。

いくつかの日付についていた、赤い丸。それは由季子が実家に来た日でした。

「いいことがあった日は、こうやって赤い丸をつける。」

父の本音が、言葉ではなく赤い丸で示されていた瞬間。由季子が頬を緩め、茂に向かって言います。

「お父さん。また来るね。」

ニコッと笑い、カバンを肩にかけて出ていく。「来なくていい」と言われ続けた娘が、「また来るね」と言える場所に辿り着くまでの小さな旅路が、须崎さんと林田の物語と静かに共鳴する演出設計は、今話の脚本の白眉でした。SNSでも「近すぎるからこそ素直に伝えられない想い」「人は一人では生きていけない、というテーマが刺さった」という声が多く集まりました。

縦軸が動く──真澄と芹沢真一の面会シーン

今話では、横軸(須崎事件)の傍ら、縦軸も大きく動きました。

冒頭、真澄が拘置所の面会室に座っています。正面に現れたのは、ボサボサの長い髪と覇気のない顔をした男。白峯女子連続殺害事件の鑑定に関わった人物として、真澄が面会を求めた相手です。

「申し訳ありませんでした。十年前。私は…あの事件から逃げました。」

深く頭を下げる真澄。しかし男──芹沢真一(渋谷謙人)は静かに、しかし冷たく返します。

「15年ですよ。」

「今更何の用ですか?」

真澄が語ります。

「真実を、明らかにしたい。そう思って今日は、ここに来ました。あの当時のことをもう一度。詳しく。教えていただけないでしょうか?」

しかし芹沢は「馬鹿にするのもいい加減にしてください」と席を立ち、退室します。15年間、拘置所で過ごしてきた人間にとって、今更来て「真実を明らかにしたい」という言葉がどれほど空虚に響くか。その重さが、短いシーンに凝縮されていました。

また真澄が言う「十年前」と芹沢の言う「15年ですよ」という年数の齟齬も気になるポイントです。真澄の記憶と芹沢の認識の間に何があるのか、最終章へ向けた伏線として引き続き注目です。

一方、検察庁では太田検事(笠松将)が真澄の動きを「少し目障りですね」と語り、圧力を示唆します。縦軸が最終章に向けて急加速していく予感が漂います。

MEJ閉鎖──桐生が告げた衝撃の事実

须崎事件の解決と同時進行で、MEJにとって最大の危機が訪れます。

「MEJは今月末をもって閉鎖することになりました。」

桐生麻帆(瀧内公美)が静かに告げたその言葉に、本田・高森・吉本・松原たちの顔が固まります。「まだ数ヶ月ですよ」と食い下がる真澄。しかし厚労省の上層部の判断は変わらず、桐生は廊下で一人、報告書を受け取ってもらえず床に落としながらも、諦めずに動き続けます。

これまで官僚としての立場と法医学者としての使命の間で揺れ続けてきた桐生麻帆の選択が、いよいよ問われる最終局面が近づいています。LOVED ONE 伏線・考察まとめでも継続して追っているこの伏線が、第10話でどう動くか注目です。

今話の伏線・考察まとめ

  • 「許さない」メモの真相【今話で回収】 须崎さんが書いた「許さない」は林田への怒りの言葉でしたが、その本質は「来てほしかった」という絶望的な待望でした。「またやったら二度と許さない」という約束が、林田を失うことへの最後の抵抗だったとも読めます。
  • タコツボ型心筋症という死因【今話で回収】 後頭部打撲・慢性硬膜下血腫・右腕の擦り傷という複数の症状が「直接の死因」ではなく、林田に会えなくなったストレスが引き金となったタコツボ型心筋症が死因として確定。法医学的解明の過程が感情的な核と直結した、今作屈指の展開でした。
  • カレンダーの赤い丸という小道具【今話で回収・演出】 須崎さんの「いいことがあった日の赤い丸」が由季子の父・茂の「娘が来た日の赤い丸」と呼応する演出設計。同じモチーフが「孤独死した老人の物語」と「父娘のすれ違い」を一本の糸で結ぶ脚本の精度が光りました。
  • 芹沢真一との面会と縦軸の動き【縦軸・進行中】 真澄が15年前の白峯女子連続殺害事件に関わる鑑定人・芹沢真一に面会するも拒絶されます。真澄の言う「十年前」と芹沢の言う「15年」という年数の齟齬も含め、白峯事件の全容はいまだ未解明のまま最終章へ。
  • MEJ閉鎖の正式決定【縦軸・進行中】 今月末での試験運用中止が正式に通知されました。厚労省の判断の裏にある圧力の正体、そして桐生・真澄たちがどう動くかが第10話以降の最大の焦点です。
  • 太田検事(笠松将)の「目障り」発言【縦軸・未回収】 真澄の拘置所訪問を受けて「少し目障りですね」と圧力を示唆した太田検事。MEJへの完全な敵対なのか、それとも別の思惑があるのか。縦軸の核心に直結する動きとして要注目です。

来週第10話予告考察──「やってもいない殺人で死刑」の衝撃

次回予告では、縦軸が一気に最前線に出てきます。

「過去の殺人事件と関係があるかもしれないんです。お父とはやってもいない殺人で、死刑判決を下されたんです。必ず、真実を、明らかにします。」

「やってもいない殺人で死刑」──白峯女子連続殺害事件で冤罪判決を受けた人物の存在が示唆されます。今話で真澄が面会を求めた芹沢真一がその関係者なのか、あるいは別に家族がいるのか。「剥奪された捜査権」「捏造された証拠」という予告ワードも含め、MEJと真澄が最大の壁にぶつかる最終章突入の予感がします。

第9話の「孤独死のリアル」と「人は一人では生きていけない」というヒューマンドラマから、一転してスケールの大きい冤罪ミステリーへ。シリーズの集大成に向けて、第10話が楽しみです。

来週のまとめ記事はこちら(準備中)

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