NHK連続テレビ小説「ばけばけ」第93話(第19週「ワカレル、シマス。」水曜日)は、静かなのに心の深いところに刺さる回でした。ヘブン先生を松江に引き止めようと、一晩で大量の防寒具を運び込んだ錦織さんの痛々しいほどの奮闘、タエさんと三之丞が語る「まだ収まっていない」ラシャメン騒動の実態、そしてサワが放った「だーれも自分のことを知らんってことだけんね」という一言。この言葉がトキの心の奥にあったトラウマを浮き彫りにし、ラストシーンの宍道湖の夕景でショールを外す演出へとつながっていきます。SNSでは「おトキちゃん」「錦織さん」がトレンド入りし、「朝から涙が止まらない」「静かなのに深すぎる」と大きな反響が広がりました。この記事では、第93話の感動シーンをセリフとともに徹底解説していきます。
「ばけばけ」第19週第93話 あらすじ
錦織はヘブンを松江に残すため、丈の助けを借りて一晩で大量の防寒具を運び込む。しかしヘブンの決意は揺るがず、「錦織さん、友達。一番友達。でも、家族、ない」と告げる。一方、タエのもとを訪れた勘右衛門は三之丞と再会し、ラシャメン騒動がまだ完全には収まっていないことを知る。一方、親友サワを訪ねたトキは熊本行きへの反対を語るが、サワは「知っちょる人がおらんとこ行けるの羨ましい」「周りもだーれも自分のことを知らんってことだけんね」と、トキ自身が気づいていなかった本音を言い当てる。サワの言葉に揺さぶられたトキは、夕暮れの宍道湖でショールを外し、世界の音に耳を澄ませる。新たな一歩を予感させるラストシーンが胸に刺さる、静かで深い一話でした。
宍道湖の夕景でショールを外す──おトキちゃんの「解放」を描いたラストシーンの演出力
第93話で最も多くの視聴者の心を打ったのは、間違いなくラストシーンでしょう。夕暮れの宍道湖を背景に、おトキちゃんがゆっくりとショールを外す。その瞬間、まるでスイッチが入ったかのように、風の音、波の音、世界の「音」が聞こえ始めるのです。
この演出が素晴らしかったのは、それまでのトキがずっと「ほっかむり」をしていたことと対になっている点です。ほっかむりをしていれば視野は狭くなるし、外の音も遮断される。つまり、ラシャメン騒動以来トキが無意識にかぶり続けていたショールは、周囲の視線から身を守る「鎧」であると同時に、自分自身を世界から切り離す「壁」でもあったのです。
SNSでも「ラストシーンの夕景の宍道湖でおトキがショールを取った瞬間、世界の音が聞こえだす演出良いね」「おトキ、その新たな一歩を踏み出してごしなさい」と話題になりました。
この回全体を振り返ると、サワの言葉をきっかけにトキの内面が少しずつ変化していく過程が丁寧に描かれていました。言葉で「解放」を語るのではなく、ショールを外すという一つの動作と、音響の変化だけでそれを表現する。ここに朝ドラ「ばけばけ」の演出力の高さが凝縮されていると感じます。
ラストに音楽が消え、自然音だけになるあの数秒間。「静かなのに深い回でした」というSNSの声がまさにこの回を象徴しています。トキが初めて自分の意思で外界と向き合おうとした瞬間を、視聴者は確かに目撃したのです。
サワだけが見抜いていたトキの本音──「だーれも自分のことを知らん」が刺さる理由
ラストシーンの解放へとつながる「鍵」となったのが、親友サワとのやりとりです。このシーン、何気ない会話のように見えて、実はものすごく深い。
トキはサワに熊本行きへの反対を打ち明けます。
「熊本には縁もゆかりもないし、誰一人知っちょる人もおらん。そげなとこ行きたくないし。松江がええ」
松江にいたい、サワのそばにいたい。トキの言葉は率直で、本心のように聞こえます。ところがサワの返しが、その「本心」の裏側をそっと突いてくるのです。
「いやなんか、知っちょる人がおらんとこ行けるの羨ましいなと思って」
トキが「え?」と驚くのも無理はありません。誰もいない土地へ行くことを「羨ましい」と言うなんて。でもサワは続けます。
「正直ずっとここにおるの疲れてきたけん。おときは疲れん?」
この一言が刺さります。「疲れん?」という問いかけは、トキが無意識に避けていた感情そのものだからです。ラシャメン騒動以来、トキは松江で「知られている」こと自体に疲弊していた。でも、それを「松江が好きだから」「家族がいるから」という理由で覆い隠していたのです。
そしてサワが放つ、この回最大のキーフレーズ。
「だーれも知っちょる人がおらんっていうことは。周りもだーれも自分のことを知らんってことだけんね」
「誰にも知られちょらんって。一からやり直せそうで憧れるわぁって。そげなことない?」
この言葉の深さに、視聴者から「おサワちゃんはわかってるんだろうな」「おサワちゃんが親友で本当に良かった」「恐怖心と正面から向かい合う事はなかなか難しく、本人は無意識に避けていて、周りの人間の方が察して心配している」と共感の声が溢れました。
注目すべきは、サワが「行きなさい」とも「行った方がいい」とも言っていない点です。ただ自分の感想として「羨ましい」「一からやり直せそう」と語っただけ。でも、その言葉がトキの心にストンと落ちた。正論で諭すのではなく、友人として自分の気持ちを語ることで、結果的にトキが自分の本音に気づくきっかけを与えている。これはサワというキャラクターの聡明さと優しさを見事に表現した脚本だと感じます。
さらにサワは「覚悟しちょる。ヘブン先生と一緒になった時から、おときはいつか松江を離れて、遠い西洋に行ってしまうんだって」とも語りました。ずっと覚悟をしていた。だからこそ、友人として最も正直な言葉を選べたのでしょう。
錦織さんの防寒具大量持ち込み──笑えるのに切なすぎる引き止め作戦
第93話の冒頭から、錦織さんの「引き止め作戦」が全開でした。前回、ヘブンに「松江の冬が寒い」という理由で熊本行きを告げられた錦織。その対策がまさかの「防寒具を大量に運び込む」という力技だったのです。
「大変遅くなりました!ヘブンさん、おはようございます。よいしょ、よいしょ、よいしょ」
弟のジョーにまで手伝わせて、一晩で大量の防寒具を用意した錦織。「これだけあれば、どんなに寒い冬でも越せるでしょう」と胸を張るその姿は、コミカルでありながらどこか痛々しい。
SNSでも「錦織さん『松江の冬が寒くなければいいんですよね!?』ニシコリサン、イジラシイ」「必死過ぎて頓珍漢な行動を取ってしまう(そして行動力だけはある)錦織さんが痛々しい」と、笑いと同情が入り混じった反応が広がりました。
しかし、この引き止め作戦に対するヘブンの返答が、視聴者の胸を打ちます。冒頭のシーンでヘブンはこう言っています。
「錦織さん、友達。一番友達。でも、家族、ない」
「一番の友達」と認めながらも、「家族ではない」と線を引く。これはヘブンが松江を離れる理由が単なる「寒さ」ではないことを示唆しています。錦織がどれだけ防寒具を積み上げても、本質的な問題──トキと家族を守るために新天地が必要だという判断──は変わらないのです。
一方で、トキもヘブンに対してこう語りかけていました。
「辞める、しませんか?松江、残る、しませんか?熊本に、錦織さん、いません。一番大切な方ですよね。ヘブンさんにとって」
トキの中でも、錦織との別れはヘブンにとって大きな喪失であると理解している。それでもなお、ヘブンは「家族」を選ぶ。錦織の頓珍漢な行動力と、ヘブンの静かな決意のコントラストが、このシーンの切なさを際立たせていました。
「あと二日、この人もう見てらんないよ」というSNSの声が、視聴者の複雑な感情を代弁しています。
タエと三之丞が語る真実──まだ収まっていなかったラシャメン騒動
第93話で見逃せないのが、勘右衛門とタエと三之丞の会話で明かされた衝撃の事実です。ラシャメン騒動は、表面上は収まったように見えて、実はまだ終わっていなかったのです。
勘右衛門はトキの騒動について、こう振り返ります。
「あの時は一刻も早くお嬢の元へ飛んで行ってやりたかったのですが、ヘブンに世話になっちょるわしが顔を見せては、火に油を注ぐことになると、おタツに止められ、泣く泣く遠くより火が収まると待っておった次第です」
三之丞もまた、ヘブンとの関わりゆえにトキを助けに行けなかった。これは雨清水家全体がトキを間接的に「見守るしかなかった」ことを意味しています。
タエもまた苦しい立場を明かします。
「ヘブンさんからお金をもらっていることを新聞にでも書きつけられたら……ラシャメンですか、それになって借金まで払ってもらっているなどと言われかねませんから」
そして三之丞が「よかったですよね。騒ぎが収まって」と安堵を見せた矢先、タエがこう告げます。
「まだ、収まってはいないのです」
この一言に、三之丞も絶句。「それなのです。ヘブンの奴も、おそらく」——ヘブンが熊本行きを決めた本当の理由が、ここで浮かび上がってきます。
SNSでも「噂は75日で下火になっても印象とトラウマは変わらない」「ラシャメン騒動が終わる訳ないのだ」という鋭い指摘が見られました。単純に「寒いから引っ越す」のではなく、トキをこの町の記憶から解放するために新天地を選んだ──ヘブンの真意がタエと三之丞の会話を通じて明らかになっていく構成は見事です。
まとめ──第93話の見どころと伏線
第93話「ワカレル、シマス。」は、派手な展開こそなかったものの、登場人物の内面を丁寧に掘り下げた「静かで深い」回でした。今回の見どころと伏線を整理します。
- ラストの宍道湖の夕景でトキがショールを外すシーン:世界の音が聞こえ始める演出が、トキの「解放」を象徴。ほっかむり=閉じた世界からの脱却を視覚・聴覚で表現した名場面です。
- サワの「だーれも自分のことを知らんってことだけんね」:トキが無意識に抱えていたトラウマの核心を、正論ではなく友人の感想として伝えた名台詞。トキの熊本行きへの心理的転換点になりました。
- 錦織の防寒具大量持ち込み:コミカルながら痛々しい引き止め作戦。ヘブンの「友達。一番友達。でも、家族、ない」という返答が、別れの不可避さを突きつけています。あと二日で錦織はどうなるのか、気がかりです。
- タエの「まだ、収まってはいないのです」:ラシャメン騒動が表面的に沈静化しても、トキへの偏見は残り続けている事実が判明。ヘブンの熊本行きの真意が「トキを松江の記憶から解放するため」であることが裏付けられました。
- 勘右衛門の苦悩「火に油を注ぐことになると」:ヘブンと関わる人々すべてがトキを助けたくても助けられなかった構造が浮き彫りに。この「善意の無力さ」も、物語の重要な伏線です。
次回、第94話ではいよいよ松江離脱への動きが加速しそうです。錦織の最後の引き止め、そして熊本編の新キャストとの出会いにも期待が高まります。おトキちゃんの新たな一歩を、引き続き見守りましょう。
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