2月17日放送のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第20週「アンタ、ガタ、ドコサ。」第97話は、熊本編に立ち込めていた”暗雲”がいよいよ形を持ち始めた回でした。最大の衝撃は、司之介(岡部たかし)がまたしても一攫千金を狙い、家の金を根こそぎ持ち出して、見るからに怪しい相場師・荒金九州男(あらがね くずお)に全額を託してしまったこと。しかもヘブンのお金である上に、どこからか借金まで重ねているという無謀ぶりです。一方、トキ(髙石あかり)とフミ(池脇千鶴)は女中のクマ(夏目透羽)の過保護に息苦しさを覚えながらも、町で手毬歌「あんたがたどこさ」を楽しむ姿を見せます。そしてヘブン(トミー・バストウ)は執筆中の作品について「秘密。喋ると話が逃げる」と語りますが、その背後にあるのは深刻なスランプ。それぞれが抱える不安が交差する、緊張感に満ちた15分間を徹底解説します。
「ばけばけ」第20週第97話 あらすじ
早朝、トキは手毬歌「あんたがたどこさ」がやりたくて仕方なく庭に出るが、クマに見つかりマリを取り上げられる。クマが自ら手毬を始めるもど下手で、トキは「見てろっていうなら、もっとうまくしろ!」と叫ぶ。一方、フミはクマの目を盗んで郵便を取りに行こうとするも阻止され、アイロンがけすら許されない。フミはトキに「ヘブンさんに女中はいらないってもっと言えばよかった」と漏らす。そんな3人の隙を突き、司之介は家の金を風呂敷に包んで密かに外出。喫茶店で相場師・荒金九州男と落ち合い、家の全財産に加え借金まで渡して小豆相場への投資を依頼する。町ではトキとフミが手毬歌を楽しみ、帰宅途中のヘブンが拍手で見守る。夜、トキはヘブンに「熊本は楽しい?」と問いかけ、自身の執筆については「秘密」と語るが、頭を抱える姿からスランプの深刻さが伝わる。
司之介、またやった──全財産+借金を荒金九州男に託す衝撃
第97話で最も衝撃的だったのは、間違いなく司之介(岡部たかし)の行動です。トキ、フミ、クマの3人が家事や手毬で騒いでいる隙を突いて、司之介は家にあるお金を根こそぎ風呂敷に包み、こっそりと外出していきます。あの慌てた様子、誰にも見つからないようにイソイソと出て行く後ろ姿を見た瞬間、「あ、これはまたやるな」と感じた視聴者は多かったのではないでしょうか。
そして向かった先は喫茶店。待ち合わせの相手は、荒金九州男(あらがね くずお)という人物です。字の通り、「荒い金遣いをする九州の男」。もう名前の時点で信用してはいけない人物であることが明白なのですが、司之介は気づかない──というより、気づきたくないのでしょう。
「馬刺し見せてもらおうかね」──金の隠語に込められた怪しさ
このシーンで印象的だったのは、荒金の独特な言い回しです。
「さあ、そしたら早速ばって、あんたの馬刺しば見せてもらおうかね」
「馬刺し」とはお金のこと。熊本の名物である馬刺しに引っかけた隠語で、いかにもその筋の人間が使いそうな表現です。この一言で、荒金がまっとうなビジネスマンではないことが画面越しにビシビシと伝わってきました。
対する司之介の反応がまた苦しい。風呂敷を開いて中身を見せながら、
「家の金に加え、金貸しでも借りてまいった。」
家の全財産だけでは飽き足らず、金貸しからも借金をして、それを丸ごと差し出しているのです。しかもこのお金はヘブンの給金から出ているものです。他人のお金を、しかも借金まで重ねて、見ず知らずの怪しい相場師に全額渡す──これはもはや投資ではなく、ギャンブルどころか犯罪に近い行為です。
荒金は小豆の実物を取り出しながら、こう断言します。
「わしの読みでは、もうじき小豆が跳ね上がる。必ず跳ね上がる。小豆が金に大化けすんばい」
「信用せい。わしは熊本のからしというからし、レンコンというレンコンばしきった男ばい」という台詞も、自信満々に聞こえて実は何の根拠も示していないのがポイントです。からしレンコンを全部食べた男がなぜ小豆相場を読めるのか。冷静に聞けば何のロジックもないのですが、生唾を飲み込んでうなずく司之介には、もうその判断力がありません。
小豆相場とは何か?「赤いダイヤ」と呼ばれた投機の実態
ここで少し、劇中で登場した「小豆相場」について補足しておきます。小豆先物取引は日本独自の商品先物市場の象徴的存在で、戦後には「赤いダイヤ」と呼ばれるほど投機的な人気を博しました。梶山季之の小説『赤いダイヤ』(1962年)で広く知られるようになり、政財界を巻き込んだ仕手戦のイメージが定着しています。
明治時代にはすでに北海道での小豆生産が拡大しており、大正時代には「小豆将軍」と呼ばれた投資家が登場するなど、まさに一攫千金の世界でした。劇中の時代設定(明治中期)を考えると、司之介が手を出した小豆相場は、当時の投機ブームの先駆けとも言える時期にあたります。
価格変動が激しく、専門知識なしに手を出せばほぼ確実に損をする世界。そこに家族の生活費と借金を全額投入する司之介の行動は、視聴者にとって「ストレス」以外の何物でもありませんでした。
ヘブンの「秘密。喋ると話が逃げる」──執筆スランプの深刻さ
第97話のもうひとつの軸は、ヘブン(トミー・バストウ)の姿でした。夜の場面、トキがヘブンに「今は何を書かれちょるんですか」と問いかけます。いつもなら嬉々として語るはずのヘブンが、この日は違いました。
「秘密」
そしてこう続けます。
「まだ言うできない。喋ると話逃げる。だから秘密」
この台詞、一見すると茶目っ気のある返答に聞こえますが、その裏にあるのは深刻なスランプです。松江中学時代には親友・錦織友一(吉沢亮)がそばにいて、ヘブンの創作活動を支えていました。しかし熊本には錦織がいない。学校では生徒たちとうまくやれているものの、知的好奇心を刺激し合える対等な友人関係は築けていないのです。
「熊本は楽しい?」に込められたヘブンの複雑な胸の内
この夜、ヘブンは就寝前のトキにこう問いかけます。
「熊本。楽しい」
これは質問なのか確認なのか、ヘブンの独特な日本語だからこそ判別しづらい問いかけです。昼間、町で手毬歌を楽しむトキとフミの姿を目にしたヘブンは、その光景に安堵を感じていたはずです。SNSでも「ヘブンにとって『トキが熊本で楽しそうにしている』はモヤつく現実の中の唯一の正義」「手毬唄で笑う母娘の姿は救いのようなものだろう」という声がありましたが、まさにその通りでしょう。
トキの答えもまた印象的です。
「なんとか楽しく暮らしちょります」
「家のことをおクマちゃんがやってくれる分、父が言うように張り合いのなさや物足りなさはありますが。それはなんとか、なんとか埋めていけますけん」
「なんとか」が2回繰り返されるところに、トキの正直な心情が滲みます。楽しくないとは言わない。でも、心から楽しいとも言い切れない。前話で司之介が語った「ヒリヒリしたことがなくて生きとる気がせん」という言葉と重なるような、熊本生活の空虚さがここに凝縮されています。
錦織不在の熊本で、ヘブンは何を書こうとしているのか
ヘブンの「喋ると話が逃げる」という表現は非常に詩的で、作家としての繊細さが感じられます。アイデアがまだ形になっていない段階で言葉にしてしまうと、その勢いや新鮮さが失われてしまう──創作に携わる人なら深くうなずける感覚でしょう。
しかし同時に、これはスランプの言い訳でもあるのかもしれません。頭を抱えて悩むヘブンの姿は、松江での充実した日々──錦織と議論を交わし、トキの怪談に触発され、次々と筆が進んだあの時間──との対比を鮮明にしていました。SNSでは「もう錦織くん呼ぼう?」という親友不在を嘆く声もあがっていましたが、ヘブンの孤独感は今後の物語の転換点になりそうです。
トキが最後に語った「話が逃げんようになりましたら教えてごしなさい」という言葉に対して、ヘブンは少し笑いながら「はい」と答えます。この短いやりとりに、夫婦の信頼関係と、トキがヘブンの創作を静かに待つ姿勢が表れていて、今回数少ない温かいシーンのひとつでした。
クマの過保護と松野母娘の息苦しさ──「見てろっていうならもっとうまくしろ!」
第97話の冒頭は、トキと手毬の攻防から始まりました。早朝、トキは昨日のクマとの手毬のやりとりが気になって目が覚めます。アンタガタドコサがやりたくて仕方ない。庭まで出て(途中で火鉢を蹴っ飛ばしながら)、マリを見つめてよだれが出そうなほどワクワクしている。
ところが、いざ始めようとした瞬間、ガラス戸の奥にクマの目がある。クマはトキからマリを取り上げ、「見ててください」と自分で手毬を始めます。しかし──ど下手。トキのたまらず出た一言がこれです。
「見てろっていうなら、もっとうまくしろーー!」
朝から思わず笑ってしまうシーンですが、その裏にはフミとトキが何もさせてもらえないストレスが確実に蓄積されていることが読み取れます。
その後の朝の場面も象徴的でした。郵便が届いてもフミは出させてもらえず、クマが受け取りに行っている隙にフミがアイロンがけをしようとしますが、戻ってきたクマにまた怒られる。
「たかが給金ばいただいとっとに、お手伝いはさせられんですけん」
クマのこの台詞は、女中としての責任感の表れですが、同時にフミとトキにとっては「何もすることがない」という苦痛を強めるものでもあります。
夏目(クマ)は孤児だった──女中にこだわる理由と背景
フミがトキに漏らした言葉が、クマの背景を教えてくれます。
「ようやってくれちょるし、ええ子だけん、あんまり言いたくないんだけど、女中さんいらんかったって、ヘブンさんにもっとちゃんと言っとくんだったわ」
トキが「言ったわね」と返すと、フミは「もっとよ。もっと、もっと」と繰り返します。しかしヘブンは「雇うします、雇うします。おくま女中します」と言って聞かなかった。その理由のひとつに、クマが孤児であるという事情があります。
身寄りのないクマにとって、松野家での仕事は単なる雇用ではなく、居場所そのものです。だからこそ完璧にこなそうとする。だからこそ「お手伝いはさせられない」と言い張る。クマの過保護は、自分の存在価値を証明するための行動でもあるのです。この設定が明かされたことで、クマというキャラクターにぐっと深みが加わりました。
町で手毬を楽しむトキとフミ、ヘブンの拍手が救いになる
家ではできない手毬を、トキとフミは町に出てやることにします。熊本の町角でようやく「あんたがたどこさ」を楽しめた母娘。そこに、帰宅途中のヘブンが通りかかり、拍手を送ります。
この短いシーンが、第97話の中で最も温かい瞬間でした。ヘブンにとって、モヤモヤする熊本生活の中で「トキが楽しそうにしている」ことは唯一の救いです。手毬唄で笑う母娘の姿に拍手を送るヘブンの表情には、安堵とほんの少しの寂しさが同居していたように見えました。
視聴者の声──「クズ父の再犯に殺意」「武士の誇りはどこへ?」
第97話は、SNSで大きな反響を呼びました。中でも圧倒的に多かったのが、司之介への怒りの声です。
「金庫から金を持ち出す司之介…相場師の荒金九州男に馬刺し=金を渡し小豆相場へ」
「司之介ほんとムカつくー。また借金?いままでどれだけ苦労させられたと思ってるんだよ」
「今日、司之介がお金を盗む場面を見て心のなかに、なんともいえない嫌な気持ち悪く感じる拒否感が芽生えた。完全に犯罪者やん。借金までして…武士の誇りはどこへいった?」
──視聴者の怒りはもはや「ドラマの感想」の域を超えて、本気の苛立ちに達していました。
「ばけばけ楽しく見てるけど、クズ父親は本当に無理…ああいうダメ父親が朝ドラテンプレっぽいけど、人の金だけじゃなく借金までしてとかああいうの見るだけでストレスだしドラマ自体を見るテンションが下がるのよ」
という声もあり、司之介の行動が視聴体験そのものに影響を与えていることがうかがえます。
司之介への怒りが朝ドラの楽しさを超えるとき
朝ドラには伝統的に「ダメ父親」というキャラクター類型がありますが、司之介の場合はそのテンプレートを超えた不快感を生んでいるようです。松江時代から何度も失敗を繰り返し、家族に苦労をかけてきた過去がある上に、今回はヘブンの稼いだお金に手をつけ、さらに借金まで重ねている。「ここで松野家、終わったーって思いました」というSNSの声は、多くの視聴者の本音を代弁しています。
「もうすぐ3月なのにこんなエピをぶち込んでいったいこの物語はどうなるんでしょうか?」という指摘も的を射ています。残り28話という終盤に差し掛かった時期に、家族崩壊の危機を描くこの展開は、物語をどこに着地させるのか、視聴者の不安と期待が入り混じっています。
ヘブンの拍手と手毬歌に癒された視聴者も
一方で、救いを見出す声もありました。「ヘブンさんのスバラシ、拍手で少し和んだけどさぁ」という感想に象徴されるように、重い展開が続く中で、トキとフミの手毬シーンやヘブンの「スバラシ」は視聴者にとって貴重な癒しポイントになっていました。
また、「手毬…上に上げるパターンなのか」「少しでも何かしようとすると怒られる松野母娘」という細かい観察からは、視聴者がこのドラマの演出を丁寧に読み取ろうとしていることが伝わります。
まとめ──第97話の伏線と見どころ
- 司之介が家の全財産+借金を荒金九州男に預け、小豆相場に全額投資。 しかもそのお金はヘブンの給金。松野家崩壊の伏線が本格始動
- 荒金九州男(あらがね くずお)という名前が全てを物語る。 「馬刺し=金」という隠語を使う怪しさに、視聴者の不安は最高潮
- ヘブンの「喋ると話が逃げる」は執筆スランプの表れ。 松江時代の錦織との関係性との対比が際立ち、熊本での孤独感が深刻化
- クマが孤児であるという背景が明かされ、過保護の理由に深みが加わった。 仕事=居場所であるクマの切実さが浮き彫りに
- トキの「なんとか、なんとか」の繰り返しに、熊本生活の空虚さが凝縮。 前話の司之介「ヒリヒリしたことがなくて生きとる気がせん」と通底するテーマ
- 町で手毬を楽しむ母娘にヘブンが拍手を送るシーンが、今回唯一の救い。 不穏な展開が続く熊本編の中で、家族の絆を感じさせる瞬間だった
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